書籍目録

『インドと日本の使徒、聖フランシスコ・ザビエルの生涯』全2巻/ 『聖ザビエルの書簡から引用した使徒にまつわるさまざまな象徴についての概略』

[ブーウール?]

『インドと日本の使徒、聖フランシスコ・ザビエルの生涯』全2巻/ 『聖ザビエルの書簡から引用した使徒にまつわるさまざまな象徴についての概略』

(3作品合冊) 1827年 シント=ニクラース刊

[Bouhours, Dominique?].

LEVEN VAN DEN HEYLIGEN FRANCISCUS-XAVERIUS, APOSTEL DER INDIEN (EN JAPONEN). / KORTE UYTLEGGING VAN HET SYMBOLUM DER APOSTELEN, GETROKKEN UYT DE BRIEVEN VAN DEN H. FRANCISCUS XAVERIUS.

St. Nicolaes, A.-L. Rukaert-van Beesen, 1827. <AB202498>

In Preparation

3 works bound in 1 vol.(complete)

8 vo (10.5 cm x 17.5 cm), pp.[1(Half Title.)-3(Title. of vol.1), 4], 5-368, pp.[1(Half Title.)-3(Title. of vol.2), 4], 5-271, 472(i.e.272), 273-362, pp.[1(Title. of 3rd work)-4], 5-78, Contemporary half brown leather.

Information

国内外でもほとんど所蔵が確認できず、極めて珍しい出版地で刊行された謎の多いオランダ語ザビエル伝

 本書はオランダ語で書かれた大部のザビエル伝で、ベルギーのアントワープ近郊にあるシント=ニクーラスという街で1827年に刊行されたという大変珍しい作品です。

 著者名の記載はどこにもありませんが、全2巻からなる非常にボリュームのあるザビエル伝で全6部で構成されています。さらにこの本編に続いて、ザビエルにまつわるさまざまな象徴(シンボル)に関して、ザビエルに認めた書簡から抜き出した上でそれぞれ簡単に解説している別の作品があわせて収録されており、その最後に伝記全2巻全体の索引が綴じられています。
 
 本文全6部は第1部から第6部までが概ね時系列に沿ったザビエルの伝記となっており、第1巻最後の第4部の後半あたり(p.301-)から、ザビエルがマラッカでアンジローと出会い日本宣教を決意するくだりが描かれていて、そこから第2巻冒頭の第5部の前半がほぼ全てザビエルの日本宣教に関する記述に当てられています。第5部後半は中国への宣教を決意してからのことが中心で、第6部はザビエルの帰天と、彼の生前と帰天後に確認されたさまざまなザビエルにまつわる奇跡譚が収録されています。こうした構成は、トルセリーニやルセナ、ブーウールらといった著名な著者による既存のザビエル伝に概ね倣ったものと思われますが、全2巻+補論の合計で700ページに迫る大部の作品となっている本書がどのような著者によって書かれたのか、あるいは既存のザビエル伝のオランダ語訳であるのかについては、現時点では不明です。なお、後述するように本書を所蔵する数少ない研究機関であるルーヴェン大学図書館は、本書の著者をザビエル伝(La vie de Saint François Xavier de la Compagnie de Jesus, apostre des Indes et du Japon. Paris, 1682)を認めたことで著名なブーウール(Dominique Bouhours, 1628 - 1702)としており、確かに両本は全6部で構成されていることや、その内容にもかなりの類似性が見られますが、本書をブーウールによるザビエル伝のオランダ語訳版であると断定するにはさらなる調査が必要ではないかと思われます。

 本書はオランダ語で書かれたザビエル伝という数多あるザビエル伝の中でも相対的に珍しい作品であることに加えて、シント=ニクラースという書籍出版地としてはほぼ無名の街で出版されているということに鑑みると、その著者(あるいは翻訳者)や出版背景なども含めて多くの謎を含んだザビエル伝であると言えます。本書の国内外における所蔵機関も極めて限られていて、国内では全くその所蔵が確認できず、海外においてもルーヴァン大学などイエズス会とゆかりの深いフランドル地方の大学図書館などでしか確認することができません。数多あるザビエル伝の中でも非常にユニークな作品の一つに数えられるものと言えるでしょう。