書籍目録

『中国と日本への新旅行記』

ドゥブレ

『中国と日本への新旅行記』

新版 [1844年?] パリ刊

Doublet, Victor.

LES NOUVEAUX VOYAGEURS EN CHINE ET AU JAPON. BEAUTÉS ET MERVEILLES DE CES DÉLICIEUSES CONTRÉES.

Paris, P.-C. Lehuby, [1844?]. <AB2020257>

Sold

New edition (Nouvelle Édition)

8vo (12.5 cm x 20.5 cm), pp.[1(Half Title.), 2], Front., pp.[3(Title.)-5], 6-298, 2 leaves(blank), Plates: [3], Original decorated leather.
一部余白に色鉛筆、ペンによる書き込みあるが全体として良好な状態。小口は三方ともマーブル染めが施されている。

Information

青少年向けの教育書に平易な文章で展開された日本論

本書は、中国(朝鮮含む)と日本についてのわかりやすい解説書として執筆されたもので、刊行年表記はありませんが、1844年頃の作品と思われます。著者のドゥブレ(Victor Doublet, 1806 - 1874)は、青少年向けの道徳や地理、歴史を主した教育書の書き手として活躍した人物で、ブルージュで修辞学や外国語の教鞭も取っていたようです。本書も教育目的の簡単な解説書として執筆されたものと思われ、平易な文体でわかりやすく中国、朝鮮、日本のことが紹介されています。

 本書の後半(179頁から270頁)は、日本の紹介にあてられていて、全2章構成で日本のことを解説しています。第1章では、長崎(Nangasaqui)、多様な宗教とその教え、統治形態、キリスト教の導入と広がり、公方(Le Cubo)、内裏(Le Dairi)、葬儀と結婚式というトピックが論じられ、第2章では、サンガ村?(Les villes de Sanga)と小倉(Kokura)、日本島(Ile de Niphon)、大阪港(Port d’OSacka)、都(Méaco)、皇帝の仏塔、寺社、オジン川(L’Ojingawva)、富士山(La montagne de Fousi)、箱根湖(Le lac de Faconi)、江戸(Jédo)というトピックが論じられています。第2章の記述はオランダ商館長の江戸参府の行程に沿って日本各地の紹介をする内容で、ケンペルやツンベルクなどの書物を主に参考としたのではないかと思われます。テキストは特定の書物の引用ではなく、全て著者が自身の手で書き下ろされたもので、ケンペルらの書物を参照しながらドゥブレが独自に執筆した内容と言えそうです。

 本書はわかりやすい平易な文章で書き下ろされた日本、朝鮮、中国紹介書としてある程度の人気を博したようで、本書も「新版」との表記があり、何ども版を重ねています。本書は著者自身の見聞に基づく日本論ではありませんが、当時広く親しまれたと思われる教育書における日本関係記事として、フランス語圏の一般読者の日本観の形成に一定の影響力を与えた文献と考えることができそうです。

仮表題頁の余白に緑の鉛筆での書き込みあり。
口絵とタイトルページ。
前半は中国と朝鮮について論じている。
3枚の挿絵が収録されているが、いずれも中国を題材としたもので、あまりテキスト本文の文脈とは関係なく挿入されている模様。
日本については後半で論じられている。
日本について論じた記事の第1章冒頭箇所。ケンペルやツンベルク、ティツィングなど来日経験をもとに日本論を表した著者の作品を参照しながら執筆したものと思われる。
日本について論じた記事の第2章冒頭箇所。オランダ商館長の江戸参府の行程に沿って日本各地の様子を紹介する内容。
巻末には付録として、マカートニーの遣清使節記を抄録している。
巻末の目次①
巻末の目次②
観光当時のものと思われる装飾が施された美しい濃い紫の革装丁。小口もマーブルで染められている。