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[改訂版] 1821年 パリ刊
Vaugondy, Robert de.
L’ASIE divisée en ses EMPIRES ET ROYAUMES,…
Paris, C.F. Delamarche, 1821. <AB2020220>
Sold
[Revised edition]
103.5 cm x 118.0 cm, 1 folded large map, dissected into 24 section, linen backed,
Information
本図を作成したヴォーゴンディ(Gilles Robert de Vaugondy, 1686 - 1766)は、当時のフランスにおける地図制作者として最も信頼されていた人物で、フランス王付きの地理学者として数多くの地図を制作し、出版していました。本図は、ヴォーゴンディが日本を含むアジア全域を描いた、短辺が1メートルを超える極めて大型の壁掛け図で、よく見られるような地図帳に収録するための地図の切り取り図ではなく、独立して出版されたものです。地図帳に収録する地図と異なり、一定の社会的地位にある人物に贈呈するために作成されたものと思われ、壁掛けにすることを前提にして、全面を24分割した上で、裏面をリネンによる裏打ちを施しています。この大型壁掛けアジア図は、大いに好評を博したようで、店主の確認できる限りでは、1778年に続いて、刊行年を明記していない改訂版が18世紀中に出されており、本図は後者の改訂版に基づいて1821年に再版されたものです。従って、ヴォーゴンディによるこの大型壁掛けアジア図は約半世紀にわたってフランス語圏で権威ある図として認められていたことになります。 ヴォーゴンディは、自身の地図帳に収めるために単独の日本図も幾度も作成していますが、本図における日本の姿は、こうした日本図を採用しつつ、周辺地域との関係を考慮したものとなっています。本州、四国、九州の主要な輪郭については、べラン(Jaques Nicolas Bellin, 1703 - 1772)がシャルルヴォア(Pierre François Savier de Charlevoix, 1682 - 1761)の『日本誌』(Histoire et description generale du Japon. 2 vols. Paris, 1736)のために1735年に作成したケンペル型の日本図(Carte de l’empire du Japon…)を採用し、本州北端と北海道南端については、ダンヴィユの韃靼・中国図(Carte generale de la Tartarie Chinoise)を採用しています。 北海道の輪郭については、当時地理学者、地図制作者、航海者の間で様々な議論が行われており、樺太が半島であるのか、あるいは島であるのかや千島列島との繋がりも含めて、数多くの説が提出されていました。ヴォーゴンディは特にこの議論に関心を持っていたようで、自身が作成した日本図やアジア図ではこの地域の描き方については、最新の議論を反映させて細かに独自のアップデートを行なっています。ヴォーゴンディは、1749年に発表した日本図(Le Japon)において、北海道を半島ではなく、はっきりと島として描きましたが、その北西部の輪郭はユーラシア大陸に寄り添うようにかなり巨大に描かれていました。これは、1643年にこの地域の航海と測量を行なったオランダ東インド会社のフリース(Maerten Gerritsz de Vries, 1589 - 1647)の測量に基づいて作成された図の影響を受けたもので、フリースの地図は、ヴォーゴンディに限らず17世紀、18世紀を通じて多くの地図製作者に大きな影響を与えていました。ヴォーゴンディは、1778年版のアジア図では、1749年に発表した自身の日本図に従って北海道を描いていましたが、改訂版である本図においては、この部分の輪郭を改め、樺太をより実際の輪郭に近いものにすると同時に、北海道の大きさをかなり縮小しているように見受けられます。 日本図、特に北海道の描き方において大きな後年の地図制作に影響を与えたヴォーゴンディは、日本においても比較的その名前がよく知られている人物ですが、本図のような大型壁掛けアジア図を作成していたということは、ほとんど知られていないのではないかと思われます。ヴォーゴンディによる大型壁掛けアジア図は、地図帳に収録された日本図やアジア図に比べて、その特別な目的のため、制作される点数が非常に少なかったものと思われ、国内研究機関はおろか、世界的に見てもその所蔵点数は極めて限られたものになっています。その意味においても、本図は非常に貴重で重要な地図ということができるでしょう。