書籍目録

『日本郵船 船名考』

ポンソンビー=フェイン

『日本郵船 船名考』

第2版 1935(昭和10)年 東京刊

Ponsonby Fane, Richard.

THE NOMENCLATURE of THE N. Y. K. FLEET.

[Tokyo], Nippon Yusen Kaisha, (November) MCMXXXV. <AB2020157>

Donated

Second edition.

15.2 cm x 22.1 cm, Title., colored Front., 2 leaves (prefaces), pp.1-4, 1-78, 1-5, 1 leaf(colophon) colored plates: [2], Original decorative Japanese card boards, bound in Japanese style.

Information

京都を愛し京都に住んだ異色のイギリス人研究者によるユニークな作品

 本書は、長年にわたって日本に滞在し、とりわけ1925年から亡くなる1937年まで京都に暮らし、京都をこよなく愛した英国人ポンソンビー=フェイン(Richard Arthur Brabazon Ponsonby-Fane, 1878 - 1937)が手がけた、日本郵船が所有する船舶の名前の由来と歴史的背景について解説されています。ポンソンビー=フェインは日本の神道研究の大家であり、かつ日本郵船の常連顧客でもあった関係で同社との関係が深く、こうした機縁から生まれたという大変ユニークな作品です。

 ポンソンビー=フェインは、イギリスの裕福な家庭に生まれたものの、病弱な体質であったことから療養のためにヨーロッパ外各地を転々とする中で1903年から香港総督秘書を務めることになり、それ以降度々日本を訪れるようになります。日本に強い関心持った彼は、日本郵船香港支店で日本語学習に熱心に取り組み高い日本語力を身につけるようになりました。1919年に香港総督秘書の仕事をやめて日本へと移住し、東京本郷に居を構え日本語教師を無償でこなしつつ、日本研究に専念します。1923年に関東大震災に被災したことを受け、1925年に京都に移住し、それから亡くなる1937年まで京都に暮らし続けました。ポンソンビー=フェインは、日本研究とりわけ日本の神道研究を精力的に行い、『ロンドン日本協会紀要』に継続的にその研究成果を英文で発表しています。

 当時の日本郵船が所有した船舶は、日本の神社や歴史的な地名にちなんだ船名がつけられていることが非常に多く、まさにこの分野の専門家であったポンソンビー=フェインは自身の優れた知見を生かして、同社所有の船舶の名前の由来や歴史的背景を詳しく紹介しています。文中には船舶の写真だけでなく、それぞれの船舶に関係する神社や歴史的出来事、地域などの写真もふんだんに収録しており、本書は単なる船舶名の紹介とは全く異なる、ポンソンビー=フェインによる優れた研究エッセイとして、おそらく当時の読者として想定されていた日本郵船一等旅客の旅の友として大いに親しまれたものと思われます。本書は装丁もこだわりが感じられ、金箔を配した和紙を表紙に和綴じが施されています。

 なお、本書初版は1931年に刊行されており、本書は1935年に増補改訂を施して第2版として刊行されたものです。