書籍目録

「ゴロウニン氏の日本幽囚記」『最新旅行記集成 第3巻 アジア』所収

(ゴロウニン)

「ゴロウニン氏の日本幽囚記」『最新旅行記集成 第3巻 アジア』所収

スウェーデン語版 1828年 ストックホルム刊

(Golovnin, Vasilii Mikhailovich)

TREDJE KAPITLET. Hr Golownins Berättelse om sin Fångenskap i Japan. In BIBLIOTHEK för Nyare Resbeskrifningar. TREDJE BANDET.

Stockholm, ECKSTEINSKA Tryckeriet, 1828. <AB201776>

Sold

Edition in Swedish.

12mo, Fly title, Title, Contents, pp. [1-4=page number lost by damage], 5-258, Original paper wrappers
刊行当時の紙の簡易装丁。表表紙が外れかけ。タイトルページから目次、本文1ページから4ページまで、損傷(焼け?)あり。ゴロウニンに関する章は問題なし。

Information

ゴロウニン事件を伝える『日本幽囚記』のこれまで未発見と思われるスウェーデン語版

本書は、これまで存在が確認されていないゴロウニン(Vasilii Mikhailovich Golovnin, 1776 - 1831)『日本幽囚記』のスウェーデン語版(抄訳)と思われる記事を含む貴重な文献です。ゴロウニンは、レザノフNikolai Petrovich Rezanov, 1764 - 1807)による1804(文化元)年の長崎来航と幕府による通商拒否、その部下による択捉島付近での略奪といった事件を背景に日露関係が緊迫していた、1811(文化8)年に国後島で幕府によって捕縛され、2年余にわたる抑留生活を余儀なくされました。ゴロウニンは帰国後の1816年に自身の体験を記した日本見聞記である『日本幽囚記』をロシア語とドイツ語で刊行し、同書は当時日本との交易関係を独占していたオランダ以外からの日本情報として瞬く間に好評を博しました。

 『日本幽囚記』は、英語、フランス語、オランダ語など多くのヨーロッパの言語に様々な形で翻訳されましたが、本書はこれまで知られることのなかったスウェーデン語による抄訳版です。本書は、もともと『最新旅行記集成(BIBLIOTHEK för Nyare Resbeskrifningar)』という当時最新の航海記、旅行記をスウェーデン語に翻訳(抄訳)して、スウェーデンの読者に届けるという叢書の第3巻として刊行されたもので、この叢書は少なくとも第4巻まで刊行されていたことが確認できます。

 本書に収録されている『日本幽囚記』は、日本についての概観と西欧諸国との交流史を簡単に振り返ってから、ロシアとの交流史、そしてゴロウニン自身の体験が論じられるという構成になっています。もともと大部の著作で知られる同書を數十頁にまとめていることから、原著を大幅に圧縮した抄訳であることは間違いありませんが、その編集構成が独特であり、何語の文献を底本をしていたかについて、まだ特定できていません。

 そもそもこの叢書自体が現在では極めて稀覯な文献とされており、本書を含めて市場に現れることが滅多にないと言われています。本書は、冒頭部分(ゴロウニン記事とは無関係の部分)に焼かれたような欠損箇所が見られるものの、刊行当時の簡易装丁を保っている大変貴重なものです。簡易装丁の表紙部分には、出版社であるECKSTEINSKA Tryckerietが、当時刊行していた書籍の分類とラインナップが掲載されており、本書の位置付けを知ることができる点も重要です。出版物は大別して6部門に分類されており、第1部門がスウェーデンとノルウェーの歴史、第2部門が最新地理学と統計、歴史と政治学、第3部門が教養書、第4部門は混合領域、第5部門は教育と児童向け、第6部門は宗教学となっていて、この叢書は第2部門に分類されています。

ゴロウニンの「日本幽囚記」は第3章で40ページ弱にわたって掲載されている。分量からみて完訳ではなく抄訳であるのは間違いないが、底本としたものが何語版なのかを特定する必要がある。
出版当時の改装を前提とした簡易紙装丁。
タイトルページ。焼けによる損傷あり。
焼けの最も酷い部分(3−4ページ)は、欠損箇所が大きい。
裏表紙