書籍目録

『兵庫県と神戸市(パナマ博覧会用特製ガイドブック)』

桑港萬國博覧会兵庫県出品協会

『兵庫県と神戸市(パナマ博覧会用特製ガイドブック)』

1915年 神戸刊

Hyogo Prefecture Exhibitors’ Association.

Hyogo Prefecture and City of Kobe. Panama-Pacific International Exposition.

Kobe, Hyogo Prefecture Exhibitor’s Association, 1915(大正四年). <AB2020100>

Sold

10.0 cm x 16.7 cm, Half Title., 1 leaf(blank), 3 leaves(portraits), 2 folded charts, 1 leaf(contents), pp.[1], 2-12, 11, 12(duplicated), 13-82, 19 leaves(advertisements), colophon, Both covers printed on crepe paper, text printed on folded leaves, bound in Japanese style.
図書館旧蔵本のためラベル、バーコードの貼り付け等あり。旧蔵機関作成の保存封筒つき。綴じ紐に外れ、緩みあり。1葉を袋綴じ状にした和装本だが、旧蔵者が誤って袋状を切り開いてしまっている箇所多数。

Information

 本書は、1915年にサンフランシスコでパナマ運河開通を記念して開催された万国博覧会(通称パナマ博覧会)に向けて、兵庫県と神戸市が貿易促進と観光誘致のために作成した特製ガイドブックです。この博覧会には日本から多くの出品者が出展したことが知られていますが、当時の兵庫県と神戸市も「桑港萬國博覧会出品協会」を組織して、兵庫県下の企業、自治体がこぞって出展したようで、本書には出展の意図や、具体的な出展者について紹介されています。全体的に観光誘致よりも貿易促進を主とした内容となっていますが、ちりめん紙に美しく描かれた神戸港を表紙として、伝統的な和綴本として製本されており、本づくりの点では旅情を誘う優れた書物となっています。

 冒頭には、兵庫県知事服部一三(K. HATTORI)、第四代神戸市長にして博覧会兵庫県出品協会長であった鹿島房次郎(F. KASHIMA)らの肖像画や、兵庫県本庁舎(現兵庫県公館)や神戸港の様子を撮影した写真などが冒頭に収録されています。折り込みの2枚のグラフは、1873年から1913年にかけてのめざましい躍進を果たしてきた対外貿易全体の推移を示したものと、サンフランシスコ博覧会を意識して、1889年から1913年までの神戸の対米貿易の発展推移を示したもので、いずれも、国際港としての神戸港をアピールし、特に対米貿易において一層の成長が見込めることを訴えるものとなっています。

 本文では神戸と兵庫の歴史、地理についての簡単な紹介に続いて、国際貿易と旅客船のための重要港としての神戸を紹介しており、具体的な港湾設備の充実状況や、現在建築中の設備についても言及しています。また、国際旅客船の有数の寄港地としての側面もアピールしていて、欧州航路、北米航路、オーストラリア航路、インド航路、ジャワ航路、南米航路、中国航路、シベリア航路といった各種国際線を運行する様々な汽船会社の寄港地であることを紹介しています。国内移動においても、鉄道の東海道線、山陽線を結ぶ重要駅としての神戸駅を紹介しています。テキストで特に力が入っているのが、優れた経済都市としての紹介で、対外貿易において神戸港がいかに重要な役割を果たしてきているかについて、具体的な統計数字を示しながら様々な角度から解説しています。菊正宗をはじめとした日本酒(SAKE)の優れた醸造所が数多くあることや、それ以外の名産品についての紹介もなされています。テキスト後半では具体的な出品者の一覧が掲載されており、さらに本文に続いては、それぞれの出品者の広告が掲載されています。テキストだけでなく、こうした広告ページも、当時の兵庫県と神戸市の主要な企業とその主力製品を知ることができる貴重なものと言えるでしょう。