書籍目録

『遣日スイス使節団の商業部門一般報告書』

ブレンワルド

『遣日スイス使節団の商業部門一般報告書』

フランス語版 1865年 ベルン刊

Brennwald, C(asper).

RAPPORT GÉNÉRAL SUR LA PARTIE COMMERCIALE DE LA MISSION SUISSE AU JAPON.

Berne, J.-A. WEINGART, 1865. <AB201764>

Sold

French edition.

14.0 cm x 21.0 cm, pp. [1-6], 7-155, TABLE, ERRATA, Folding plates [4], Original paper wrappers

Information

スイス遣日使節としてアンベール団長と共に来日した、ブレンワルドによる日本の商業を中心とした報告書

 スイスによる日本との通商条約のために1863年に派遣された使節団は、特命全権公使にアンベール(Aimé Humbert-Droz, 1819 - 1900)、商業部門を担当する公使館参事官としてブレンワルド(Casper Brennwald, 1838 - 1899)を主軸として、幕府との交渉に挑み、1864年に日瑞修好通商条約の締結に成功しました。以来、日本とスイスとの国交関係は第二次世界大戦中も途切れることなく、今に続いています。

 この記念すべき使節団の見聞記としては、アンベールによる『幕末日本図絵(Le Japon Illustré. 1870)』が非常によく知られています。一方、スイス使節団にとって最大の目的であった日本との通商関係樹立と貿易促進において、最も重要な役割を果たしたブレンワルドによる報告書は、その重要性に比してあまり知られていません。本書は、このブレンワルドによる日本報告書です。

 アンベール自身が連邦参議院議員にしてスイス最大の産業輸出団体である時計組合の依頼を受けて日本との交渉に挑んだことからもわかるように、スイスにとって日本との国交樹立における最大の目的は、まさに貿易促進にありました。ブレンワルドは、商業部門の担当者として、来日後の1863年から矢継ぎ早に日本の生糸や茶の輸出や養蚕事業について、また輸入貿易についての報告書を作成しました。これらの報告書は、日本との通商条約締結後の実際の貿易促進において最重要の情報源として、1865年に『日本貿易報告書』、すなわち本書としてまとめられ出版されました。本書によって、スイス商人は日本の通商状況についての詳細を知ることができるようになり、その後の貿易振興に大きな影響を与えたとされています。

 本報告書は、スイスの遣日使節による公式報告書とも言える位置付けで、1865年にスイスのベルンにてドイツ語版とフランス語版とが刊行されました。ただし、その発行部数が少なかったのか、それとも市場への流通数が少なかったのかは分かりませんが、日本の研究機関にはほとんど所蔵が確認できず、わずかに東京大学史料編纂所にドイツ語版が所蔵されているのみと思われます。本書は、フランス語版で、東京大学所蔵本であるドイツ語版とは異なりますが、そのページ数は全く同じであることから、同じ内容を持つものと思われます。

 ブレンワルドについては、近年国内での研究が盛んになっており、横浜開港資料館を中心とした「ブレンワルド日記研究会」による共同編集書『ブレンワルドの幕末・明治ニッポン日記』(日経BP社、2015年)が刊行されています。同書で詳しく報告されているように、ブレンワルドは、条約締結後に横浜でシイベル・ブレンワルド社を設立し、同社は現在のDKSH社として現在も存続する稀有な西欧系企業としても知られています。

 スイスと日本との通商条約締結に尽力した使節団の公式報告書として、大変重要な資料です。