書籍目録

『世界の人々の姿:第1巻 アジア編』

著者不明

『世界の人々の姿:第1巻 アジア編』

1838年 ヴェネツィア刊

GALLERIA UNIVERSALE. DI TUTTI I POPOLI DEL MONDO ossia STORIA DEI COSTUMI, RELIGIONI, RITI, GOVERNI D’OGNI PARTE DEL GLOBO CON TAVOLE…Tomo Primo.

Venezia, Giuseppe Antonelli, 1838. <AB202017>

Sold

vol.1 only (of 5 vols.)

4to (19.5 cm x 28.0 cm), Illustrated colored Title., pp.[1(Title.)-7], 8-288, Plates: [67(i.e. LACKING PLATE VII)], Contemporary half leather.
図版が一葉(第7番)欠落。図版紙葉は綴じから外れているものや紙端が痛んでいるものあり。図版第36番までは手彩色が施されており、第37番以降はモノクロ。

Information

ユニークなイラストとともに日本の地理、歴史、文化を詳細に紹介

 本書は、世界各地に暮らす人々の姿、衣装、風俗、宗教、政治経済状況などを、美しい挿絵とともに紹介した叢書の第1巻で、日本を含むアジア地域を対象としています。著者名は明記されておらず不明ですが、世界各地の膨大な情報を整理して紹介するための力量を有していた人物であることは間違いありません。この草書は最終的に全5巻構成となり、第1巻アジア、第2巻アフリカ、第3巻アメリカ、第4・5巻ヨーロッパという内訳になっています。

 テキスト前半では、各国地域の地理、歴史、政治、宗教事情といった、当該地域を理解するための概略的な記述となっていて、後半はテキストに対応する67枚の図版が掲載されています(本書では1枚欠落)。本書刊行当時、後半の図版に手彩色を施した版と、モノクロ版との2種類が刊行されたようですが、奇妙なことに本書では、図版第36番までにfux が施されていて、第37番以降はモノクロとなっています。

 ダブル・カラムで300ページ近くとかなり分量のある前半のテキストでは、日本についての解説もかなり充実していて171ページから187ページに渡って、日本の地理、歴史、統治形態、経済状況、宗教事情等についての充実した記事を読むことができます。テキスト後半では、収録されている図版番号を指示しながら、具体的に様々な日本の人々の様子を解説しており、図版とともに日本のことを理解できる構成となっています。

 後半の図版で日本を対象としたものは、第36番から第38番までで、第36番のみにて彩色が施されています。一見、中国の人々と混同されていると思われる絵もありますが、同時代の他の書物に掲載された図版を参考にしたと思われる様々な階層、職業の日本の人々の姿を見ることができます。また、17世紀のモンターヌスの著作に由来すると思われる「京都の図(Veduta di Miaco)」も収録されています。

 本書は本格的な研究書というよりも、教養習得のための学習素材としての性質が強い書物でないかと思われますが、それだけに多くの人々の目に触れる機会があったものと思われます。テキストと視覚の双方において日本の姿を伝えたユニークな文献の一つということができるでしょう。

手色彩が施されたイラスト・タイトルページ。本書が対象とするアジアをイメージしたものと思われる。
見返し部分には当時の読者?によるものと思われる落書きあり。
タイトルページ。
テキストはダブル・カラムで掲載されており、かなりの分量がある。日本については、171ページから187ページに渡って、地理、歴史、統治形態、経済状況、宗教事情等の多岐にわたるトピックに関する充実した記事を読むことができる。
図版第36番(手彩色図版)
図版第37番(モノクロ)本書の刊行当時、図版に手彩色を施した版と、モノクロ版との2種類が刊行されたようだが、本書はなぜか途中で手彩色とモノクロとが切り替わる。
図版第38番。上は、京都の姿を描いたもので17世記のモンタヌスの書物に由来する図。