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1874(紀元2534)年 大坂刊
<AB2019186>
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15.5 cm x 22.2 cm, 表紙, 2丁(口絵), 19丁(1-19), 4丁(1-4), 奥付, 題箋のある原装丁 拍子にすれと傷み、綴じ紐に緩みあり。表題と奥付に旧蔵者による押印と書き込みあり。
Information
本書は、江戸時代から寺子屋などで使われていた教科書的な読み物である「商売往来」を、明治以降の西洋諸国との交易が盛んになるのに合わせて内容を改訂、変容させた書物の一つで、貿易において取り扱われる西洋の文物を絵入りでわかりやすく紹介しています。著者の松川半山は、幕末から活躍していた絵師で、明治に入ってからは挿絵だけでなく、自らもテキストを手掛けて、本書のような通俗的な教科書を多く著しています。本書冒頭には横浜居留地における実際の商取引の場面と、各国の領事館や住居、貿易船が集結し活況を呈する横浜の様子を描いた、多色刷りの口絵が収録されていて、当時の活気がに漲る雰囲気を伝えています。本書は、明治初期の1874年に刊行され、冒頭に「開明」という言を大きく掲載していることからもわかるように、「文明」や「開化」が叫ばれる明治という新しい時代を強く意識して著されています。その意味で、本書は、当時を生きる人々が、西洋諸国との交易を通じて、日々の暮らしの中でどのような変化を感じていたかの一端を伝える書物と言えるでしょう。 本書には、明治6年9月官許、同年7月1日に、東京の長野亀七によって出版された旨を記した奥付を有するものと、本書のように大坂心斎橋の梅原亀七によって出版された(刊行年や官許の表記はなし)ものとの少なくとも2種類の版が存在するようです。両本の出版上の関係は不明ですが、内容はほぼ同じと見られ、本書である後者の版の方が現存数が少ないようです。 「主に明治初年に海外から流入してきた『各国互新発明之器械・物産』が急速に日本社会に拡がり始めたことを背景に、それら舶来の新商品名を列挙した往来。『方今文明開化、月に進、日に新而、万国交際、四海兄弟に均し...』と筆を起こし、世界六大州と主要国に触れた後で、織物・布帛、服飾、染色、家財、食器、家具、その他日用品、農具、世界の鳥類、虫類、樹木、発明品等の語彙を列挙する。うち一部舶来品等については、『商売往来絵字引』の如く語彙に続けて図解を掲げ、発明品の電信・蒸気機関車・蒸気船には短い説明を添える。末尾には、商法・企業・金融周辺の語彙や日用語全般を羅列し、さらに教訓的な『家室清潔、一族和合、商売繁盛、無疑者也』の文言で締め括る。文字を大字・五行・付訓で記す。巻頭に『東京横浜異人館図』『異人邸の図』(色刷り)を掲げる。なお、巻末広告に本書二編・三編の近刊予告を載せるが、それらが出版された形跡はない(本書である梅原亀七版にはこの広告はない;引用者注)。』 (小泉吉永「万国商法往来」『往来物解題辞典』データベース版より)