書籍目録

『コシキ(古事記)』(楽譜)

ルコック

『コシキ(古事記)』(楽譜)

[1876年] パリ刊

Lecocq, Charles.

Kosiki: OPÉRA COMIQUE EN 3 ACTES.

Paris, Brandus & Cie, [1876]. <AB2019135>

Sold

18.0 cm x 26.8 cm, Title., 1 leaf, pp.1-263, Contemporary half leather on marble boards.
装丁にイタミ、本体にシミ、ヤケ、一部破れあり。

Information

19世紀フランスを代表するオペレッタ作曲家によるコミック・オペラのためのジャポニスム楽曲

「ルコック《コシキ》−ジャポニスムの先駆的オペレッタ

(前略)シャルル・ルコック(1832〜1918)は、フランスのオペレッタ界ではオッフェンバックに次ぐ重要な存在であり、生涯に50以上ものオペレッタを作曲した。(中略)
 1876年の10月18日に《コシキ》という3幕のオペレッタ(オペラ・コミック)がパリのルネッサンス座で初演された。ルコックが全盛期の44歳の作品であったが、これは明らかに日本を扱ったものである。台本はウィリアム・バスナック他が担当した。先の『オペレッタ解説』(大田黒元雄著、音楽之友社、1952年のこと;引用者注)では、《コシキ》は、『古事記』と関係があると書かれているが、実際は江戸時代の宮中を舞台にしたものである。実際は女であるが、わけあって男装をした「太陽の子」コシキをめぐって、皇位継承と結婚についての葛藤を扱かっているが、これにあろうことか曲芸師がからんでくるのもオペレッタらしいところである。
 《コシキ》には、主役に高音域を要求するアリア、酔っ払いのコミックな歌、役人や官女たちの魅力的な合唱、それに玉投げやナイフ投げのような曲芸の場面など、聴きどころ、見所が多くあってパリではかなり評判がよく、100回ほど上演されたといわれる。その後ドイツ、オーストリア、ハンガリーなどでも上演されたが、結局は恒久的な演目にはならなかった。しかしこの作品は、その後の一連の日本物オペレッタの嚆矢であったという歴史的な意義はある。特にその題材が《ミカド》の制作に何らかの影響を与えたことも十分に考えられる。」

(岩田隆『ロマン派音楽の多彩な世界』朱鳥社、2005年、137-139頁より)