書籍目録

「日本地図:朝鮮、満州、中国北部との接続を含めて」(ガイドマップ)

トーマス・クック商会

「日本地図:朝鮮、満州、中国北部との接続を含めて」(ガイドマップ)

刊行年不明(1920年代か) 横浜刊

Thos. Cook & Son.

MAP OF JAPAN WITH CONNECTIONS CHOSEN - MANCHURIA - NORTH CHINA.

Yokohama, Box of curios press, not dated (1920th?). <AB201933>

Sold

1 sheet (Folded map), (31.0 cm x 39.0 cm / folded: 10.3 cm x 16.5 cm),

Information

 トーマス・クック(Thomas Cook, 1808 - 1892)は、イギリスの実業家で、旅行代理店を世界的に展開することで成功を収めた人物です。旅行者が旅行先で無駄なく魅力的な景勝地や見所を訪れることを可能にする、いわゆる団体旅行ツアーの企画、提供することで成功を収めたことから、近代ツーリズムの祖と言われています。また、クックは鉄道時刻表をはじめとした各種出版物の刊行でも非常によく知られており、ホテルガイドや各地のガイドブックを多く生み出しました。残念ながら、2019年9月に178年の歴史に幕を降ろす破産申請がなされたという報道がありましたが、クックが今日に至るまでの旅行業に多大な貢献と影響を及ぼしたことは誰もが認めるところです。 

 クックは開国後の日本において、横浜に支社を構え早く(1907年)から来日外国人観光客を相手とするビジネスを展開していました。1928年に、国際的な寝台列車会社であったワゴン・リ社 (Compagnie internationale des wagons-lits)を買収してからは、同社と連名で神戸にも支店を出して勢力的な活動を行なっています。 また、ジャパン・ツーリスト・ビューローのガイドブックの代表的な設置所でもあり、当時の外国人観光客が、何らかの形で必ず関わる可能性の高い企業であったと思われます。

 この地図は、クック社が作成した旅行者向けガイドマップで、日本や朝鮮半島、大陸沿岸地域の主要な鉄道路線や、運行されていた船舶の航路を示したものです。地図そのものは非常に広い範囲を描いており、地図というよりは路線図として作成されていて、旅行者が当時用いることができる交通手段とそのルートを一目で把握できることに主眼が置かれているようです。地図には刊行年の表記がなく、性格な時期は特定できませんが、おそらく1920年代ごろのものではないかと思われます。また、出版社についても明記はされていませんが、地図左下の欄外に落款のようなものがあり、これを注意深く見てみますと、Box of curios press とあるのが確認できます。この出版社は横浜居留地地区にあった出版社で、英文横浜地図などを刊行していたことが知られています。

 クックは、ガイドブックをはじめとした旅行書等の出版物作成についても、世界各地を対象にして精力的に行なっていたことで知られていますが、日本を対象としたものが、いつ頃から、どのくらい作成されたのかについては、現存数が少ないこともあってほとんど分かっていません。特に、この地図のように旅行が終わってしまうと捨てられてしまうことが多かった資料は特に現存していることが少ないと思われることから、当時のクックの活動と日本との関わりをたどる上で、かえって貴重な資料であると言えるでしょう。