書籍目録

「日本に上陸する旅行者のための情報」(ガイドブック)

トーマス・クック商会

「日本に上陸する旅行者のための情報」(ガイドブック)

1913年 横浜刊

THOS. COOK & SON

Information for Travellers Landin in Japan.

Yokohama, THOS. COOK & SON (Press of the Box of Curios P. & P. Co.), (January, )1913. <AB201930>

Sold

13.0 cm x 19.0 cm, pp.[1(Title.)-4], 5-88, folded map: [1], Original pictorial wrappers bound in Japanese style.

Information

旅行社の世界的名門、クック商会横浜支社による英文日本ガイドブック

 トーマス・クック(Thomas Cook, 1808 - 1892)は、イギリスの実業家で、旅行代理店を世界的に展開することで成功を収めた人物です。旅行者が旅行先で無駄なく魅力的な景勝地や見所を訪れることを可能にする、いわゆる団体旅行ツアーの企画、提供することで成功を収めたことから、近代ツーリズムの祖と言われています。また、クックは鉄道時刻表をはじめとした各種出版物の刊行でも非常によく知られており、ホテルガイドや各地のガイドブックを多く生み出しました。残念ながら、2019年9月に178年の歴史に幕を降ろす破産申請がなされたという報道がありましたが、クックが今日に至るまでの旅行業に多大な貢献と影響を及ぼしたことは誰もが認めるところです。 

 クックは開国後の日本において、横浜に支社を構え早く(1907年)から来日外国人観光客を相手とするビジネスを展開していました。また、ジャパン・ツーリスト・ビューローのガイドブックの代表的な設置所でもあり、当時の外国人観光客が、何らかの形で必ず関わる可能性の高い企業であったと思われます。

 本書は、この偉大なツーリズムの祖であるクック商会が作成し、1913年1月に発行した、英文の日本ガイドブックです。そのタイトルからもわかるように、実際に来日した外国人観光客を対象とした内容となっており、到着後の荷物の扱いや関税処理に始まり、日本各地の概要や通貨、クック社以外のものも含む各種日本ガイドブックの案内を紹介しています。紹介されているガイドブックには喜賓会の各種出版物を見ることができます。日本各地の名所や見どころ、鉄道網や料金といった、実際に観光するにあたって重要となる情報が豊富な写真とともにコンパクトにまとめられており、実用的な内容が充実しているように思われます。また、クック社らしく、日本を観光するにあたってのツアープランも掲載している点も特徴的です。随所に旅情を誘う写真が多数掲載されていることも特徴で、日本到着後に有用であることはもちろん、日本への旅行を計画する際にも豊かなイメージを膨らませることができるような作りとなっています。62ページからは旅行者に関連のある企業、商店、ホテルの広告となっており、当時のインバウンド産業がどのようなものであったのかを垣間見ることもできます。広告欄には日本ホテル協会に所属する会員ホテルの一覧表も掲載されています。

 クック商会が英文日本ガイドブックを何時頃から作成し、どのようなものを発行していたかについては、実は殆ど知られていないものと思われますが、ビューローが作成した英文ガイドブックに少なからず影響を与えたことは、両者の関係の緊密さからして間違いないものと思われます。