書籍目録

『1920から30年にかけての旅の印象記:中国、朝鮮、日本、アメリカを経てヨーロッパへ』

ヤハト

『1920から30年にかけての旅の印象記:中国、朝鮮、日本、アメリカを経てヨーロッパへ』

私家版 / 著者直筆献辞本 1932年? 出版地不明

Jagt, M.B. van der.

REISINDRUKKEN, 1929=1930: OVER CHINA - KOREA - JAPAN - AMERIKA NAAR EUROPA.

not placed, Self published, 1932?. <AB20196>

Sold

16.7 cm x 210 cm, Title., Front., pp.[1-2], 3-75, Original Pictorial paper wrappers.

Information

長年にわたって蘭領インド経営に携わった著者によるアジア旅行記、貴重な私家版

 著者のヤハト(Max Buttner van der Jagt, 1873 - 1960)は、父が蘭領インド(現在のインドネシア)で砂糖業を営んでいた関係で幼少期は蘭領インドで過ごし、オランダの官吏として東南アジア統治に長年携わってきた人物です。蘭領インド統治の責任者にまでなったヤハトですが、現地住民の福祉向上を目指した「倫理政策」と呼ばれる改革方針には終始批判的で、こうした政策は蘭領インドの発展と安寧を脅かすものとして否定的な立場を取っていたことでも知られています。

 本書は、ヤハトが1920年に蘭領インドを去ってオランダに帰国する際に、中国、朝鮮、日本へと渡り、そこからアメリカを経由してオランダに到着する1930年までの旅行記をまとめたもので、私家版としてごく少部数が発行されたものです。ヤハトが道中で記していた日記をもとに構成されており、1929年という東アジア一帯の政情不安定が高まりつつあった時期に蘭領統治に長年携わったオランダ人高官が残した記録として興味深いものです。日本統治時代の朝鮮を経由して、1929年11月4日に、広島宮島に到着しています。宮島では戦前期の同地を代表する国際観光ホテルであった宮島ホテルに宿泊して観光した際の様子が記されています。そこから瀬戸内を経由して京都に滞在し、途中箱根にも立ち寄ってから12日には東京に到着しています。東京では日本の古き面影と近代都市としての両面に感銘を受けたようです。本書は私家版としてごく少部数しか発行されなかったため、これまでほとんど知られることすらありませんでしたが、蘭領インド統治に長年携わったオランダ高官が残した、貴重な日本見聞記録として興味深い資料と思われます。