書籍目録

『ザビエル書簡集』附属『日本教会記』

トルセリーノ、プシーヌ編 / ワイデンフェルド

『ザビエル書簡集』附属『日本教会記』

1692年 ケルン刊

Tursellino, Horatio (ed.) / Possino, P. Petro (ed.) / Weidensfeldt, Joannis.

S. FRANCISCI XAVERII E SOCIETATE JESU, INDIARUM APOSTOLI EPISTOLAE, VETERES PER QUINQUE, ET NOVAE PER SEPTEM LIBROS DISTIN-ctae, ex ipsismet autographis manu S. XAVERII Hi-spanico vel Lusitanico idiomate conscriptis, & à P. HORATIO TURSELLINO, & à P. PETR

Köln, Haeredes Joannis Weidensfeldt / Joannem Godefridum de Berges, 1692. <AB20173>

Sold

12mo, f.[1]2-4[5-6], pp.864, pp.[1-5]6-58, 1 leaf, contemporary calf

Information

鎖国後に日本宣教を志願しながら病に倒れた人物による日本研究

 本資料は12折の大変小柄な本ながら、全900ページを超える大部のものです。その内860ページほどはザビエルの書簡集に当てられていますが、最後のわずか60ページ弱に収められた『日本教会史』と題された小品に極めて高い価値があります。
 
 ザビエル書簡集は、優れたザビエルの伝記を著したイエズス会士トルセリーノ(Horatius Ursellinus, 1545 – 1599)が編纂し1596年に刊行したものが、長く定番書として17世紀以降も読み継がれました。これに同じイエズス会士であるプシーヌ(Pierre Poussines, 1609 – 1686)が新たに発見した書簡を追加して増補改訂版を1667年に刊行し、以降のザビエル書簡集の決定版となり、幾度も版を重ねました。本書に収められているザビエル書簡集も基本的には、この二人によるものです。
 
 本資料の最後に付された『日本教会史』は、ケルン生まれのイエズス会士ワイデンフェルト(Adam Weidenfeld, 1645 – 1680)によって著されたもので、1689年に単著として刊行されていたことが確認できます。本資料に収められたものは、その再版にあたると思われるものですが、以降版を重ねた形跡はありません。

 本書は、時の第11代イエズス会総長であるジョバンニ パオロ オリヴァ(Giovanni Paolo Oliva, 1600 – 1681)に当てた書簡の形式をとって、日本と西欧諸国との交渉史、とりわけ当然ながら布教の歴史を1542年以降から論じたものです。巻末には殉教者の名簿、ならびに日本各地の布教拠点がまとめられており、小論ながら、包括的に日本の布教史を扱っている大変資料的価値の高いものです。本書に書かれているように、ワイデンフェルドは、自身も日本への布教を志願して布教に赴く途上において亡くなった人物でもあることから、周到に日本について調べ上げていたことが伺えます。
 
 本書は今日に至るまでほとんど注目されることはありませんでしたが、シャルルヴォア(Pierrre Francois Xavier de Charlevoix, 1682 – 1761)が、主著『日本史』(Histoire de Japon. 1736)において言及していることが確認できます。

 国内における所蔵も極めて少なく、1689年版を上智大学と筑波大学が所蔵しているほか、本資料と同じ1692年版を東洋文庫が所蔵していることしか確認できません。