書籍目録

『東洋汽船会社:アメリカ、ハワイ諸島、日本、中国、フィリピン、インドのガイド』

東洋汽船会社

『東洋汽船会社:アメリカ、ハワイ諸島、日本、中国、フィリピン、インドのガイド』

(出版地、出版社情報は収録地図に依る) [1916年頃?] [シカゴ刊]

Oriental Steamship Company (Toyo Kisen-Kaisha).

TOYO KISEN KAISHA. AMERICA, HAWAIAN ISLANDS, JAPAN, CHINA, PHILIPPINES, INDIA.

[Chicago], [Poole Bros], [c.1916?]. <AB2018187>

Sold

21.5 cm x 22.7 cm (Folded: 10.9 cm x 22.7 cm), pp.1-46, printed in 12 leaves including both covers, Original pictorial paper wrappers.

Information

東洋汽船が絶頂期にあった1916年頃に刊行されたと思われる英文ガイドブック

 このガイドブックを作成した東洋汽船は、明治から昭和にかけて日本の旅客業界の中心の一角を担っていた海運会社です。現在の商船三井である大阪商船と日本郵船と並ぶ海運会社として大型客船や太平洋航路の運営など積極的な経営方針で知られており、特に海外旅客の誘致には特に熱心で、創業者である浅野総一郎は、紫雲閣と名付けた自身の邸宅に海外からの主要な旅客を招いて宴会を催したりもしています。また、ジャパン・ツーリスト・ビューローの活動にも尽力し「亡くなられる迄殆んど欠かさずビューローの総会に出席され、われわれを大いに激励された」とビューロー25周年回顧録に記されているほどです(山中忠雄『回顧録』ジャパン・ツーリスト・ビューロー、1937年)。

 折りたたむことでポケットに入りやすくなる縦長の形状となるガイドブックは、1枚を左右に分けてテキストを配置しています。最初に東洋汽船の航路や会社概要、主要な保有船舶の紹介などがあり、ここには浅野総一郎の肖像写真も見ることができます。ガイドブックの内容は、1900年頃に刊行されたものと思われる初期のガイドブックを継承しているものと思われ、構成も非常によく似ています。保有船舶の紹介では、1905年の建造開始当時(運用は1908年から)、同業最大手であった日本郵船をして驚愕せしめたと言われる、天洋丸(Tenyo-Maru)や、太平洋航路の運用に際して提携していたパシフィック・メール社から1916年に購入したサイベリア丸(Siberia)、 Maru)や、波斯丸(Persia Maru)、これや丸(Korea Maru)などを中心にした紹介がなされています。本書に収録されている地図には1913年との表記がありますが、1914年以降に購入された船舶の情報が掲載されていることから、1916年頃に刊行されたものではないかと推察されます。

 テキストは、日本の主要都市の案内や、紀行、ガイド(通訳)などが記されていて、1900年ごろのガイドブック刊行当時にはまだ発足していなかったジャパン・ツーリスト・ビューローの案内が新たに加わっています。横浜、東京近郊、日光、鎌倉、富士山、京都、奈良、神戸、瀬戸内、下関、門司、長崎などが数多くの写真とともに紹介されています。続いて、中国、フィリピン、インド、ホノルルの紹介があり、サンフランシスコからアメリカ西海岸を起点してニューヨークまでのアメリカ各地の紹介を見ることができます。巻末は、同社が運行していた航路や料金といった実際的な情報が掲載されていて、簡便なガイドブックとしては非常によくできた内容と思われます。また中程には、航路を記した世界地図と日本地図を掲載しており、大まかな地理情報も得ることができるようになっています。