書籍目録

『中国、日本、ペルシャ、インド、アラビア、トルコ、エジプト、アルジェリアその他の歴史』(叢書『世界の歴史と人々』第9巻)

ソリニー

『中国、日本、ペルシャ、インド、アラビア、トルコ、エジプト、アルジェリアその他の歴史』(叢書『世界の歴史と人々』第9巻)

1844年 パリ刊

Saurigny, M. de.

HISTOIRES DE LA CHINE, JAPON, DE LA PERSE, DE L'INDE, DE L'ARABIE, DE LA TURQUIE, DE L'EGYPTE, DE L'ALGERIE, ETC.,...(LE MONDE, HISTOIRE DE TOUS LES PEUPLES. TOME NEUVIÉME).

Paris, Béthune et Plon, 1844. <AB2018151>

Sold

13.0 cm x 21.0 cm, Half Title, Front., Title., pp.[1], 2-527, Plates: [33], Contemporary half leather on marble boards.
テキストにスポット状のヤケが散見されるが、読解には問題なし。

Information

日本の開国直前の時期にヨーロッパで流行した「世界の人々」の中で紹介された日本

 本書は、そのタイトルが示すように、日本や中国、中東諸国の人々と歴史を紹介する内容で、叢書『世界の歴史と人々』第9巻として刊行されています。30枚以上の豊富な図版が収録されていることが特徴で、視覚的に当該地域の人々の様子をわかりやすく捉えられるように工夫されています。

 日本が開国を迎える少し前の、19世紀に半ば頃は、ヨーロッパで世界の人々を挿絵とともに紹介する叢書企画が流行したようで、国、言語を問わず、同種の企画がいくつも刊行されていることが確認できます。本書もそうした流行の最中に刊行されたもので、同じ著者によるものだけでも、数種類が確認できることから、売れ行きは相当のものであったことが伺えます。
 
 全10巻からなる『世界の歴史と人々』の第9巻として刊行された本書ですが、タイトルに大きくあるように、中国、その紹介に多くの紙幅がさかれており、それに続いて日本に追記の記事もまとまって見ることができます。本文は辞書のような二段組でレイアウトされており、テキストの情報量が非常に豊富で、日本についての記事は、107頁から129頁までとなっています。また、日本に住む男女の様々な衣装を紹介した図版2枚も収録されています。テキストでは、ザビエル渡来前後のポルトガル人による日本との交渉史に始まって、レザノフらロシア人による日本へのアプローチといった刊行当時最新に近い情報までを盛り込んでいます。日本の政治制度、地理、人々の文化などもコンパクトにまとめられており、先行する文献を特に参照している場合は、文献名も明記されています。収録されている挿絵は、モンタヌスによる17世紀のものに由来する系譜のものですが、一部はそうでないものも参照しているように見受けられます。

 本書は、ベストセラーということもあって相当の部数が流布したようで、現在でも比較的入手が容易な文献ですが、叢書の中の一章で日本が紹介されていることから、これまで国内の研究機関ではごくわずかな所蔵しか確認することができません。日本開国直前の時期におけるヨーロッパの標準的な日本像を示す典型例として、本書は一定の価値を有する研究資料となるのではないかと思われます。

  • ハーフタイトルページ
  • タイトルページ
日本についての記事冒頭箇所。
日本記事に収録されている図版①モンタヌスの著作の系譜にある最後期のものといえる。
日本記事に収録されている図版②こちらも基本的にはモンタヌスの著作から取っているが、一部それ以外からも採用したものと思われる。
  • 刊行当時と思われる装丁で状態は良い。
  • 見返し部分には綺麗なマーブル紙があてがわれている。