書籍目録

『日本誌:ケンペル、ツンベルク、ボーモント、英文その他の諸文献から編纂された』

アストーリ

『日本誌:ケンペル、ツンベルク、ボーモント、英文その他の諸文献から編纂された』

全2巻(合冊) 1826年 ミラノ刊

Astori, Giulio.

STORIA DEL GIAPPONE COMPILATA SULLE OPERE DI KAEMPFER, DI THUNBERG, DI BEAUMONT, DE' LETTERATI INGLESI E D'ALTRI...

Milano, Ant(onio). Fort(unato). Stella, 1826. <AB2018147>

Sold

2 vols. (Bound in 1 vol.)

18º (9.3 cm x 14.5 cm), Vol.1: pp.[1, 2(Front.), 3(Title.)-5], 6-208, Plates: [2], Vol.2: pp.[1, 2(Front.), 3(Title.)-5], 6-211, Plates: [2], Contemporary half leather on marble boards.
表表紙の背付近に痛みが見られるが、それ以外は概ね良好な状態。

Information

当時最新の文献と信頼できる文献から編纂されたイタリア語「日本誌」

 本書は、ケンペル(Engelbert Kämpger, 1651 - 1716)やツンベルク(Carl Peter Thunberg, 1743 - 1828)といった当時最新の、あるいは権威ある名著と評価されていた日本についてヨーロッパ人が記した文献を駆使してイタリア語で編纂された「日本誌」で、1826年にミラノで刊行されています。

 著者のアストーリ(Giulio Astori)についての詳しいことはわかっていませんが、全100巻以上からなるとされる、世界中の地域の歴史、文化、風習などを纏め上げる「普遍史(Storia Universale)」叢書の一環として、本書は刊行されているようです。全2巻からなる構成で、本書は両巻が1冊に合冊されています。現在でも非常によく知られているケンペルや、ツンベルクの著作のほか、ボーモント(François-Marie Marchant de Beaumont, 1769 - 1832)の『中国、日本、韃靼の美しき歴史(Beautés de l'histoire de la Chine, du Japon et des Tartares,...1818)』といった当時最新の日本文献や、イエズス会士による各種文献、ケンペルに影響を受けて日本の統治論に言及したモンテスキュー(Charles-Louis de Montesquieu, 1689 - 1755)の『法の精神(De l'Esprit des lois, 1748)』などの派生文献も駆使して編纂されていることから、当時のイタリアのみならずヨーロッパにおける日本情報を総動員して作成された文献と言えます。

 本書の主な内容を列挙してみますと、下記のようになります。

第1巻
第1章:日本概論
第2章:日本の気候
第3章:日本の動植物とその活用
第4章:日本に住み人々の身体的、精神的特徴、道徳など
第5章:日本の食品(酒、タバコなどの嗜好品含む)
第6章:日本における各種の学問、文化
第7章:日本の犯罪と刑罰
第8章:日本と海外との交渉史とその影響
第9章:日本の統治形態
第10章:日本で信仰されている各種宗教
第11章:仏教、あるいは異国の偶像
第12章:神道、あるいは哲学者による教条(朱子学含む)
第13章:日本に住む人々の起源と古代

第2巻
第14章:キリスト生誕までの日本の聖なる皇帝(天皇)の系譜
第15章:キリスト生誕から最初の世俗の統治者である(源)頼朝までの日本の統治者の系譜
第16章:頼朝以降の天皇の系譜
第17章:頼朝以降の将軍の系譜;内裏と公方
補遺第1章:日本の主要都市、特に長崎について
補遺第2章:蝦夷、琉球、朝鮮について
補遺第3章:オランダ人による(1776年の)江戸参府(ツンベルクの記録から)
補遺第4章:将軍家光による1626年の上洛についての記録
補遺第5章:ポルトガル人とスペイン人の日本到来とその後の歴史について

 このように様々な角度から網羅的に日本を論じていることから、まさに「日本誌」の標題に偽りのない内容であることが分かります。また、本書には、口絵2枚を合わせて合計6枚の図版も収録されています。いずれの図版も(Arnoldus Montanus, 1625 - 1684)の著作に収録されている図版に範をとったものと思われます。

 本書は、当時のヨーロッパ人がイタリア語で入手し得た日本情報の水準を示す文献として重要と思われるものですが、国内では国会図書館を除いて所蔵している機関がないようで、国外研究機関の所蔵もごく一部に限られているようです。
 

タイトルページ
第1巻口絵。基本的に17世紀のモンタヌスの著作をベースとしたもの。
本文冒頭箇所。
  • 第1巻に収録されている図版①
  • 第1巻に収録されている図版②
第2巻タイトルページ
第2巻口絵
  • 第2巻に収録されている図版①
  • 第2巻に収録されている図版②
第2巻末尾に目次がある。目次の詳細さを見るだけでも、著者がかなり多くの文献を参照して本文を構成していることがうかがえる。
表表紙の背付近に痛みが見られるが、それ以外は概ね良好な状態。