書籍目録

『日本の農業生産物について』(『フランス順化協会紀要』より)

メネ

『日本の農業生産物について』(『フランス順化協会紀要』より)

著者直筆献呈本 1885年 パリ刊

Méne, Edouard.

DES PRODUCTIONS VÉGÉTALES DU JAPON.

Paris, Au Siège de la Société Nationale d'Acclimatation, 1885. <AB2018125>

Sold

Dedication copy.

8vo (15.0 cm x 23.5 cm), Fly Title, Title, pp.[1], 2-592, Contemporary half calf on marble boards.

Information

食のジャポニズム、1878年パリ万博を起点とした日本の農産物と食品のフランスへの紹介

 本書は、1878年に開催されたパリ万博に出品された日本の農産物、食料品を網羅的にかつ詳細に紹介するという、明治の食の国際交流史において大変興味深い文献です。
 
 1878年のパリ万博は、空前のジャポニズムブームを巻き起こしたことでよく知られていますが、その一方で日本の農産物や食料品についての高い関心をフランスにもたらしていたことは、あまり知られていないのではないでしょうか。本書は、日本の農産物とそれらを元にした加工食品、調味料などを網羅的に紹介したもので、本書によって日本の食料品全般がフランスに広く紹介されることになったのではないかと思われます。

 本書の刊行を企画したのは、「順化協会(Société Nationale d'Acclimatation)」と呼ばれる協会で、これは世界中のあらゆる植民地の植生を調査するとともに、自国やヨーロッパの環境を理想像として、それらをより発展させつつ、植民地の環境を「改良」することを目的として調査、活動を行なっていました。フランス帝国主義を象徴する組織の一つとしても知られていますが、この「順化協会」紀要で発表されたものが本書に他なりません。

 著者の詳しい経歴については分かっていませんが、本書によればこの協会において要職にあったことに加え、日本をはじめとしたアジア学の権威でもあったということですので、日本の農産物、食料品に対する関心を本書刊行以前から強く持っていたものと思われます。文中では、先行する日欧様々な文献を駆使している点に見ても、アジア学についてかなり精通していたことが伺えます。

 本文中で紹介される農産物、食料品は実におびただしい量にのぼっており、またそれぞれについて詳細な解説がつけられており、さながら明治日本の食物大辞典の様相を帯びています。本書の元来の意図は、順化協会の活動を始め、産業振興や、貿易活動に資するためであったと思われますが、現在の視点から見ると、明治日本の農産物や食料品がフランスにどのように紹介されたのかだけでなく、当時の日本の食をめぐる環境を垣間見ることができる資料にもなっています。

オリジナルの紙装丁を保ちつつ刊行当時に半革装丁が施されたものと思われる。
右上に著者による直筆献辞がある。
タイトルページ。
あらゆる種類の日本の農産物が様々なリソースをもとに紹介されている。上掲は「味噌(miso)」「豆腐(To-fu)」について紹介している箇所。