書籍目録

『オイゲン・アイナイグルの世界旅行全記録』

アイナイグル

『オイゲン・アイナイグルの世界旅行全記録』

全2冊(合冊)私家版 1896, 1897年 ウィーン刊

Einaigl, Eugen.

EUGEN EINAIGL'S GESAMMELTE BERIchTE VON SEINER WELTREISE.

Wien, Im Selbstverlage, (Durch von Friedrich Casper in Wien), 1896, 1897. <AB2018124>

Sold

2 vols. (Bound in 1 vol.)

14.0 cm x 19.8 cm, I. BAND: pp.[I](Title)-III], IV, Front., pp.[1], 2-210, 2 leaves, Plates: [8] , II. BAND: Title, 1 leaf, Front., pp.[1], 2-128 , 1 leaf, Plates: [1], Contemporary three-quarter cloth on marble boards.

Information

1899年、神戸と横浜に「アイナイグル、ブラウネ商会」を設立したアイナイグルによる、日本を含む世界旅行記。貴重な私家版

 本書は、ドイツ人アイナイグル(Eugen Einaigl, 生没年不明)が行なった世界旅行のついての記録をまとめたもので、タイトルページ記されているように私家版としてごく少部数のみが刊行されたものと思われます。全2巻構成となっており、第1巻が1896年に、第2巻が97年に刊行されており、本書は両書を合わせて1冊に合本したものです。アイナイグルの旅行記の第2巻はそのほとんどが日本についての記述に当てられています。

 アイナイグルは当時の主要ルートであった横浜、神戸を中心として関東、関西各地を訪ねたようですが、彼の視点は旅行者のそれにとどまるものではなく、商人としての鋭い視点が随所に垣間見えます。アイナイグルは、のちの1899年に横浜にアイナイグル、ブラウネ商会を設立しており、海上保険を中心としたビジネスを行うことになりますが、この旅行時に立ち寄って見聞したことを元にビジネスを開始することを思い立ったことが伺えます。記事の末尾には、度量衡の説明に始まり、巻末の横浜と神戸で営業している外国企業の一覧を掲載するなど、アイナイグルが日本を訪れて何らかのビジネスチャンスを感じ取ったことは間違い無いのでしょう(ただし、残念ながらアイナイグル、ブラウネ商会はあまり成功することなく短期間のうちに営業を終了したようですが)。

 一方、旅行者としてのアイナイグルの視点も当然多岐に渡るもので、当時の横浜や神戸を中心とした日本社会を外国人の視点から切り取って独自の考察を加えています。また、数は多く無いものの挿絵も収録されています。本書は、上述のようにアイナイグルが私家版として刊行したもので、その発行部数は極めて少なかったものと思われるため、国内の研究機関での所蔵が全く確認できない大変貴重なものです。

全2巻構成で、本書は両巻が合冊されている。上掲は第1巻タイトルページ。私家版のため、現存数は極めて少ない。
第2巻タイトルページ。著者のアイナイグルはこの時の見聞をヒントに後年1899年に会場保険会社「アイナイグル、ブラウネ商会」を設立したものと思われるが、この商会は短命で1902年に閉鎖された。
第2巻の大部分は日本についての記述に当てられており、神戸、横浜を中心とした内容となっている。
日本記事冒頭箇所。横浜の街並みを写した写真が掲載されている。
文中にも写真が多く含まれている。
日本記事末尾には、当時神戸と横浜の居留地で営業していた外国商会の一覧と度量衡の紹介などがなされている。
小口がマーブル模様に美しく染められている。