書籍目録

『日本二十六聖人殉教史』

パジェス (日本二十六聖人)

『日本二十六聖人殉教史』

初版 / 著者直筆献辞本 1862年 パリ刊

Pagés, Léon.

HISTOIRE des vingt-six MARTYRS JAPONAIS dent la canonisation doit avoir lieu à Rome, le jour de la Pentecôte 1862.

Paris, Benjamin Duprat, 1862. <AB201874>

Sold

First edition. / Author's dedication copy.

12mo (11.0 cm x 16.5 cm), Half Title, Title, pp.[1], 2-109, Original paper wrappers.
ページの一部が製本当時のまま未開封(Unopened)の状態。

Information

パジェス自筆献呈本

「日本二十六聖人殉教者の列聖にあたって、レオン・パジェス(Leon Pages, 1814-1886)の著『日本概史』から抜粋して出版された書である。パリで、1862年に刊行された。
レオン・パジェス(1814-1886)はフランス人東洋学者。北京公使館付きとして中国滞在中に東洋学に興味を抱き、また、カトリック教徒としてキリシタン研究に力を注いだ。『聖フランシスコ・ザビエル書簡集』(1855年)、『日本図書目録』(1859年)、『日本語文典論』(1861年)、『日本切支丹宗門史』(1869-70年)など、後のキリシタン研究の先鞭をつける重要な研究を行った。
二十六聖人殉教者は、豊臣秀吉の命令で、長崎で処刑された。当時まだ歴史の浅い日本のキリスト教信者が、殉教という明らかな証(あかし)によって信仰を貫徹したできごとである。キリスト教信仰がヨーロッパ人以外にも根付いた出来事として注目され、日本から多くの報告書がヨーロッパに向けて発信された。中でも、出来事の目撃証人となったイエズス会日本管区長ペドロ・ゴメスの報告書は有名である。なお現在は長崎の西坂に、二十六聖人殉教者の記念碑がある。
列聖とは、カトリック教会の中で英雄的信仰生活を送り、死後天国の幸せを味わっていると信じられる人を、教会全体の模範(聖人)として宣言することである。人々が聖人と考える人について、ローマ教皇が調査し、英雄的信仰生活と正しい教え、奇跡という条件が満たされるときに、荘厳な式(列聖式)をもって、教皇は聖人であることを宣言する。」
(上智大学ラウレスキリシタン文庫データベース解題(資料番号821972704)より)

 本書は、上掲の解説文にあるように、ヨーロッパにおける日本宣教史研究の泰斗であったパジェスによる、いわゆる「二十六聖人殉教事件」史で、この事件の殉教者が列聖された1862年に刊行されたものです。同年に刊行された「第2版」との表記がある版が、より広く流布したようで国内研究機関における所蔵本のほとんどは「第2版」ですが、本書は珍しい初版本で、しかも著者であるパジェスによる自筆の献辞が表紙に記されている大変貴重なもので、当時のパジェスの学問的交流の様相を知る手がかりにもなりうる資料です。

 なお、本書の裏表紙には、パジェスによる『日仏辞書』(1862年-)など当時既に刊行されていた他の著作の紹介に加えて、「準備中」の著作として全4部からなる『日本帝国史』の当時の構想が掲載されています。本書も、この刊行が予定されていた『日本帝国史』の一部となるものを先行して刊行したものですが、残念ながら『日本帝国史』は最終的に完結することなく、その一部のみが刊行されました。本書裏面の記載によると、『日本史』は次のような構成となるはずだったようです。

『日本帝国:その起源と当地におけるキリスト教、ならびにヨーロッパ諸国との関係』
八つ折り判で全4巻、挿絵付きで約600ページとなる見込み。

第1巻
第1章「地理、民族誌、自然誌」
第2章「当地における異教とキリスト教」
第3章「政治、法制度、行政区分」
第4章「農業、商業、農業、商業、流通、諸工芸、学問、度量衡と貨幣」
第5章「言語、文芸」

第2巻
第1章「日本の年代史、ヨーロッパ人来航以前」
第2章「ヨーロッパ人による発見と使徒ザビエル」
第3章「(足利)義輝の治世ほか(1550年〜1565年)」
第4章「信長の治世(1566年〜1582年)」
第5章「太閤様(秀吉)の治世(1582年〜1598年)」

第3巻
第1章「大夫様(家康)の治世(1598年〜1615年)
第2章「将軍様(秀忠)の治世(1615年〜1631年)」
第3章「東照宮様(家光)の治世(1631年〜1651年)」

第4巻(近現代史)
第1章「1651年〜1760年」
第2章「1761年〜1840年」
第3章「1841年〜1862年」
文献目録
地図索引
一般事項索引

 これによりますと本書は、第3巻第2章の一部となる箇所を先行して発表したものと言えるようです。

表紙、右上の書き込みがパジェス自身による献辞。
タイトルページ。
裏表紙には刊行済みのパジェスの他の著作と、当時「準備中」で最終的に未完となった『日本帝国史』の構想が掲載されていて興味深い。