書籍目録

『聖なる殉教者の勝利と日本の殉教者』

リゴーリ?

『聖なる殉教者の勝利と日本の殉教者』

独訳版? 1841年 レーゲンスブルク刊

Liguori, Alfonso Maria de'.

Die Siege der heiligen Martyrer, worin die Geschichte der Japanesischen Martyrer ausführich mitgetheilt wird. Nebst einem Anhange, enthaltend: Das Leben des P. Cassaro aus dem Orden der Redemptoristen und der Klosterschwester Theresia.

Regensburg, G. Joseph Manz, 1841. <AB201865>

Sold

First edition (in German ?)

8vo (11.8 cm x 19.0 cm), Front., pp. [I(Title)-III), IV-VIII, [1], 2-467, Contemporary card boards.
タイトルページに旧蔵機関の蔵書印あり。全体にヤケのようなスポット状のシミあり。

Information

日本の殉教者に関する詳細な歴史を収録

 本書は、そのタイトルが示す通り「殉教」を主題としており、日本における殉教者の歴史についても詳細に論じた文献で、1841年にドイツのレーゲンスブルクで刊行されています。

 全3部構成をとっており、口絵に殉教者聖マキシミリアンが描かれていることからわかるように、歴史上の主要な殉教者の生涯を数多く紹介する内容となっています。第1部では、殉教が信仰の証としていかに重要で偉大なものであるかについての概説が述べられた後に、人物ごとに殉教者列伝ともいうべき内容で数十名の殉教者を取り上げて紹介しています。

 第2部は、日本に関する内容で最も興味深い内容で、タイトルにもあるように日本の殉教者について詳細に記述しています。第1部とは異なり、人物ごとに編集するのではなく、ザビエルに始まる日本布教の開始からその途絶までの日本における宣教活動を時系列に沿って記しており、それぞれの殉教事件もその中で解説されています。1597年のいわゆる26聖人殉教事件をはじめとした主要な殉教事件を、度重なる迫害、拷問にも関わらず信仰を捨てなかった殉教者の尊さに焦点を当てながら描いています。第2部は、291ページから392ページまでの100ページを超える分量が割かれており、結果的に日本におけるキリスト教宣教史ともいうべき網羅的な通史となっていて、日本研究文献として非常に有益と思われる資料となっています。

 本書の著者は、レデンプトール会の創始者として知られる聖人リゴーリ(Alfonso Maria de' Liguori, 1696 - 1787)とされていて、標題紙には「イタリア語からの翻訳」と記されていますが、店主の調べた限りでは原著にあたるイタリア語の文献を特定することができませんでした。主要な日本研究文献目録にも本書は掲載されていますが、いずれもドイツ語で刊行された本書だけを掲載しており、イタリア語の原著とされる文献については言及していません。リゴーリが列聖されたのが1839年で、本書が刊行された1841年頃にかけてリゴーリ関係の文献で同様に「イタリア語からの翻訳」と称したものがいくつか刊行されていることから、あるいはリゴーリ再評価の機運に乗って、リゴーリ作と称して刊行されたものかもしれませんが、後年1852年に刊行された『リゴーリ全集 (Sämmtliche Werke des heiligen Alphons Maria von Liguori.)』にも第2版として収録されていることから、やはりリゴーリ自身の著作というべきでしょうか。

 何れにしても、本書第2部に収録された「日本の殉教者の歴史」は、日本研究文献として有益な情報を提供していることに違いはなく、国内でもこれまでほとんど所蔵されてこなかった資料としても価値あるものと言えましょう。

口絵とタイトルページ。口絵に描かれているのは、殉教者として名高い聖マキシミリアン。
序文冒頭部分。
第2部、日本の殉教者の歴史のタイトルページ。
第2部冒頭部分。1549年のザビエル渡来以降から始まる。
第2部第1章は、キリスト教弾圧が強まり始める1590年から1614年にかけての歴史を扱う。
第2部第2章は、1614年から1624年までを扱う。
第2部第3章は、1624年以降、日本におけるキリスト教宣教が途絶するまでを扱う。
当時のものと思われる厚紙装丁。