書籍目録

「地理学者トーマス・ジェフェリーズによる最新の発見に基づいて描かれた東インド図」(『ジェントルマンズ・マガジン1748年6月号』所収)

ジェフェリーズ

「地理学者トーマス・ジェフェリーズによる最新の発見に基づいて描かれた東インド図」(『ジェントルマンズ・マガジン1748年6月号』所収)

1748年 ロンドン刊

Jefferys, T(homas).

THE EAST INDIES DRAWN from the latest Discoveries, By T. Jefferys, Geographer, to his Royal Highness the PRINCE OF WALES. (In The Gentleman's Magazine: For JUNE 1748.)

London, E(dward). Cave, 1748 (June). <AB201850>

Sold

small 4to (14.0 cm x23.0 cm), Title, Contents, pp.[243], 244-288, Folded map: [1], Plate: [1], Disbound.

Information

初期ジェントルマンズ・マガジンに収録された日本を含む唯一の東インド地図。

 本資料は、世界最初の雑誌(Magazine)と言われるジェントルマンズ・マガジンの1748年6月号で、日本を含めた東インドを描いた折り込み地図が収録されている点に価値があります。

 ジェントルマンズ・マガジンは、1731年にエドワード・ケイヴ(Edward Cave, 1691 – 1754)によって創刊されてから瞬く間に人気を博し、出版社、編集者を変えながら二世紀以上に渡って刊行されました。時の編集者、寄稿者にはあらゆる分野の著名人が含まれており、中でも有名なのは、ケイヴと親しかった文豪サミュエル・ジョンソン(Samuel Johnson, 1709 – 1784)でしょう。

 本資料に収録されている東インド地図を作成したのは、当時のイギリスを代表する地図製作者であるジェフェリーズ(Thomas Jefferys, ? - 1771)です。王室御用達の地図製作者として数多くの地図を作成しており、当時特に重要であった北米地図の政策でも有名です。本図は、彼がプリンス・オブ・ウェールズ(フレデリック・ルイス, Frederick Louis, 1707 - 1751)お抱えの地図製作者であった時期に作成されたものです。インド半島以東の日本を含む東インド全域を描いたもので、地図中には当時用いられていた主要航路が破線で示されています。日本図については、類似の地図に見られない独特の輪郭で描かれていますが、その情報量はかなりのもので、また比較的正確と言えます。北海道と本州の間に存在しない松前島(Matsumay I.)が描かれている点を含め、ケンペル『日本誌』所収の地図の影響が強い輪郭と思われますが、本州の輪郭はケンペルの地図をそのまま用いているわけではないようです。琵琶湖と淀川と大阪湾とが繋がって描かれ、全体が深い湾のようになっているのは、同時代の他の地図にも見られる特徴です。何か特定の日本図をそのまま借用したわけではなく、いくつかの地図を比較検討しながら、ジェフェリーズが独自に描いたともの思われます。

 本文中には直接日本に関係する記事は見受けられませんが、ジェントルマンズ・マガジンにこのような貴重な地図が収録されていたことは、これまでほとんど注目されてこなかったものと思われ、島田孝右、島田ゆり子『近世日英交流地誌地図年表 1576-1800』(雄松堂出版、2006年)61頁に掲載されているほかは、本図に注目した研究はないように思われます。ジョン・ニコルス(John Nichols, 1745 – 1826)が作成したジェントルマンズ・マガジンに収録された地図と図版の索引(Nichols, John. A Complete List of the Plates and Wood-cuts in the Gentleman's Magazine, from the Commencement in the Year 1731 to 1818. London, 1821) を紐解いてみても、類似の地図が収録されている形跡はないことから、初期のジェントルマンズ・マガジンに掲載された貴重な日本図と言えるものです。

1748年(第18号)の6月号の中に本図は収録されている。
6月号目次
テキスト冒頭部分
このように折り込み地図として収録されている。
日本の輪郭はケンペルを参照しつつ、ジェフェリーズが独自に手を加えているようである。