書籍目録

『殉教した福者アンジェロ・オルスッチの生涯』(聖人伝記叢書第4シリーズ、25年次147号)

グェルラ

『殉教した福者アンジェロ・オルスッチの生涯』(聖人伝記叢書第4シリーズ、25年次147号)

1875年 モンツァ刊

Guerra, Alerico.

VITA DEL MARTIRE B. ANGELO ORSUCCI PATRIZIO LUCCHESE E MISSIONARIO DELL' ORDINE DEI PP. PREDICATORI PEL SACERDOTE ALMERICO GUERRA CANONICO ONORARIO della Metropolitana di Lucca. (COLLANA DI VITE DI SANTI: SERIE QUINTA - ANNO XXV; Dispensa 147).

Monza, ISTITUTO DEI PAOLINI, 1875. <AB201841>

Sold

8vo(9.3 cm x 15.4 cm), pp.[1(Half Title), 2], Front., [3(Title), 4], 5-152, Original paper wrappers.
ほぼ未開封(Unopend)の状態。

Information

元和の大殉教で犠牲となったオルスッチの列福を記念して刊行された評伝

 本書は、1622(元和8)年に起こったいわゆる元和の大殉教で犠牲となったオルスッチ(Angelo Orsucci, 1570 - 1622)の伝記で、1867年にピウス9世によって列福されたことを記念して、1875年にモンツァで刊行されたものです。

 元和の大殉教は、長崎で55名が処刑された江戸時代初期を代表する大規模な殉教事件で、イエズス会をはじめとした外国人宣教師だけでなく、数多くの日本人信者も犠牲となりました。オルスッチは、イタリアのルッカ出身の宣教師で、フィリピンのマニラやメキシコメキシコで活動し、すでにキリスト教弾圧が厳しくなっていた1618(元和4)年に長崎へと渡りますが、間も無く長崎で捕縛されたオルスッチは大村へと送られ9月に処刑されました。

 全22章で構成されている本書のハイライトは、言うまでもなくオルスッチが日本への渡航を希望してから処刑されるまでの期間に当てられており、第9章から20章までがその記述に当てられています。捕縛され牢に入れられてからもオルスッチが揺るぎない信仰を保ち続けたことや、毅然として処刑に臨んだこと、オルスッチが起こしたとされる奇跡などがこれらの章で記されています。著者のグェルラ(Almerico Guerra, 1833 - 1900)は、本書以外にも多くの聖人伝や殉教事件に関する著作があり、フランス語や英語に翻訳された著作も数多いことから当時の同種の著作家として一定の評価を得ていたものと思われます。

 オルスッチの伝記としては、本書に先立つ200年ほど前の1682年に『アンジェロ・オルスッチの生涯(Vitta de lvenerabile servo di Dio F. Angelo Orsucci. Lucca, 1682)』が刊行されていますが、本書はこうした先行文献を元に新たにまとめ直されたものと思われます。また、本書の後には1923年に『福者アンジェロ・オルスッチの生涯(Ferretti, Lodovico. Vita del Beato Angelo Orsucci. Roma,1923.)』が刊行されています。



「アンジェロ・オルスッチ(Angelo Orsucci, 1570-1622 )はトスカーナのルッカ(Lucca )で生まれた。フランシスコ修道会に入り、ローマで修練を重ねたのち、フィリピンへ渡った。1602 年4 月にマニラに到着し、間もなくルソン島北部のカガヤンで布教を始めた。次いでバタン島へ派遣され、同島に1612 年まで滞在した。その後メキシコへ移ったが、短期間でバタン島へ戻り、この地の管区会議で管区長に選出されたものの、これを辞退している。この前後に日本におけるキリスト教弾圧と殉教者の実情を聞き、修道士としての使命感から、日本に渡って布教をおこなう決心をした。やがて彼の申し出は認められ、1618(元和4)年8 月、日本人に変装して長崎へ潜入した。
 当時の日本国内は、徳川幕府のキリスト教弾圧が日増しに高まっており、信者や布教活動をする宣教師たちにとっては、まさに苦難の時代であった。ほどなくオルスッチは捕らえられ、大村で入牢した。1622(元和8)年9 月に他のキリシタンらと共に長崎へ送られ、同月10 日、市中引き回しのうえ火刑に処せられた。処刑の際、ただひたすらに祈りを唱えていた彼の身体は、地面から1 メートルほど浮き上がったと言われている。1867 年7 月にローマ教皇ピウス9 世(Pius IX, 1792-1878, 在位期間1846-1878)により、聖人に次ぐ福者の称号を与えられた。
 ロドヴィコ・セスティ(Lodovico Sesti )によってオルスッチの生まれ育った町で出版されたこの伝記は3 部構成になっている。第1 部はオルスッチの家系、生い立ち、日本に到着するまでの記述、第2 部は日本におけるキリスト教の伝播経路とオルスッチが日本に到着後、投獄されて処刑されるまでの記述、第3 部はオルスッチの殉教に関連した驚異的な出来事についての記述となっている。」
(京都外国語大学附属図書館展示目録 『日本をヨーロッパに紹介した戦国期の宣教師たち』所収「セスティ『アンジェロ・オルスッチの生涯』」 )

表紙。
口絵とタイトルページ。殉教の場面を描いた口絵は、伝えられているように空中に浮かび上がったというオルスッチの姿を描いている。