書籍目録

『桜の香り』

甲斐兼蔵

『桜の香り』

スペイン語版 1934年 メキシコシティ刊

Kai, Kenzo / Ito Keichi

LA GRAGANCIA DE LA FLOR DEL CEREZO.

Mexico City, Mundial, 1934. <AB201817>

Sold

Spanish edition.

12.3 cm x 17.8 cm, pp. [1(Title)-4], 5-92 with index, Original paper wrappers.
所々封切りされていないページあり。

Information

満州事変を題材にしたプロパガンダ小説? スペイン語に訳されたメキシコ版

 本書は、1931年に勃発した満州事変を題材にとった作品で、プロパガンダ的色彩の強い小説ではないかと思われます。著者の甲斐兼蔵については詳細は不明ですが、1933年に日本外事協会(The Foreign Affairs Association of Japan)から、『桜の香り(Sakura no kaori : the fragrance of cherry blossoms)』と題した英文著作を東京で刊行しており、これが本書の原著となったものと思われます。この『桜の香り』は翌1934年に第2版が刊行されており、それなりの読者を獲得したようですので、何らかの形でそれがメキシコに伝わり、スペイン語版として刊行されたものではないかと思われます。

 本書でも、「満州と上海において1931年9月18日に英雄的な行動をとった我らが官吏と陸海軍人に」という献辞が捧げられていることから明らかなように、満州事変を好意的にとって題材とした作品のようです。表紙に書かれているKeichi Itoについての詳細はやはりわかりません。本書の英文原著自体が、現在ではほとんど知られていない作品ですが、この作品がスペイン語に翻訳されて遠くメキシコで出版されていたことには驚きを禁じえません。

タイトルページ。
「満州と献辞「上海において1931年9月18日に英雄的な行動をとった我らが官吏と陸海軍人に」
本文冒頭。