書籍目録

『英雄的な日本:ルーズベルトを非難す』

パルヴィス

『英雄的な日本:ルーズベルトを非難す』

(機密につき)非売版 / 著者直筆献辞 1942年(2月) トリノ刊

Parvis, E. G.

L'EROICO GIAPPONE: E LA CONDANNA DI ROOSEVELT NEL VERDETTO DELLA STORIA.

Torino, Antonio Viretto, 1942 (Febbraio). <AB201814>

Sold

(Fuori Commercio)

17.0 cm x 24.0 cm, Title, pp. 1-19, Original paper wrappers.

Information

イタリア国家ファシスト党研究機関による日本の太平洋戦争開戦分析とプロパガンダ

本書は、太平洋戦争開戦直後の日本の戦況をイタリアのファシスト機関がどのように分析し、広報していたかを知るための大変重要な資料です。ムッソリーニによる国家ファシスト党(Partito Nationale Fascista, PNF)は、言うまでもなくドイツ、イタリア、日本の間で1940年に締結された日独伊三国間条約の、イタリアにおける政治的主体でしたが、彼らが実質的に運営していたファシスト文化王立研究所(Istituto nazionale di cultura fascista)は、ファシスト党のプロパガンダ機関、そして実際的な戦況分析機関として活動していました。本書は、この研究所によって開催された会議でなされた報告を、関係者の配布のみを目的として非売版として出版したものです。

 タイトルから容易に推察できるように、日本による対米宣戦布告を高く評価しており、日本の海戦の目的はアングロ・サクソン諸国によってアジア各地にもたらされた厄災を取り除き、恒久的な平和をもたらすことに他ならず、そのために英雄的な戦いを開始したのだと述べています。また、このような事態を招いた英・米の責任を厳しく糾弾しており、とりわけルーズヴェルトの対日政策が戦局の拡大をもたらしたことを強く非難しています。もちろん、実際的な時局の分析も詳細に行っており、大陸、島嶼部アジア地域におけるこれまでの衝突と日本の行動を分析しており、今後の戦局が日本優位に進むであろうことを結論づけています。

 著者のパルヴィス(E. G. Parvis)についての詳しいことは分かりませんが、1920年代末から30年代にかけて政治関係の論考を数点発行していたようですので、恐らくそうした前歴をもとに、PNFの関与が増していくファシスト文化王立研究所で要職を得ていたものではないかと思われます。

 本書は、非売(Fuori Commercio)と表紙にあるように、ごく限られた関係者だけに配布することを目的しており、タイプうちのような非常に簡素な印刷によって作成されています。表紙にはパルヴィスによる直筆献辞があり、関係者にパルヴィスが直接送ったものであることがわかります。ごく簡便な小冊子で、非売版であったことから、このような印刷物は、現在ほとんど残っていないものと思われますが、日独伊三国同盟締結後のイタリア・ファシスト党が、日本の太平洋戦争開戦直後の進展をどのように捉えていたかを物語る大変需要な資料と言えるものでしょう。

タイトルページ。
表紙上部にある著者パルヴィスによる直筆献辞。
テキスト冒頭。タイプ打ちのような簡素な印刷である。
テキスト末尾。押印されているW. DIRK VON LANGENについては不明。もう1冊のものとは異なりファシスト文化王立研究所(Istituto nazionale di cultura fascista)による会議で報告されたものであることは記されていないが、形状、主題から見て同種のものと見て間違いないと思われる。