書籍目録

『日本の噺家』

ジュルス・アダム(ジュール・アダン)/ 長谷川武次郎

『日本の噺家』

初版 明治32(1899)年 東京

Adam, Jules / Hasegawa, T(akejiro).

AU JAPON. LES RACONTEURS PUBLICS.

Tokio(Tokyo), T. Hasegawa, 1899. <AB2023034>

Sold

First edition.

13.7 cm x 19.1 cm, 16 folded crepe paper leaves (including covers), bound in Japanese style, silk tied, with a contemporary beautifully decorated cloth cover.
刊行当時のものと思われる特製の布カバーが附属。

Information

当時の購入者が特注したものと思われる美しい布(絹?)製カバーが付属する極美本

ただいま解題準備中です。今しばらくお待ちくださいませ。

「本書は「ちりめん(縮緬)本」である。この「ちりめん本」は、江戸時代から伝わっている伝統的な技術を使って、文章や絵が木版印刷された和紙を縮緬、即ちクレープ状にして、和綴じの技術で製本した純日本的な書物である。明治時代の初めに長谷川武次郎が、在留外国人に我が国の伝承文学や文化的な事柄をヨーロッパ言語で纏めさせ、日本に住む同胞はもとより、広く海外へも紹介した。本書の著者ジュール・アダンはフランス領事館の一等書記官で、ジョゼフ・ドートゥルメールと共にちりめん本のシリーズ「日本昔噺」のフランス語訳も担当している。
 本書の内容は、落語家や寄席を取り巻く環境を書いたもので、本書が刊行された1899(明治三十二)年頃には東京に寄席が二百三十四軒あると書かれ、寄席を描いた挿絵には、三遊亭圓生や小圓遊など現在でも有名な名跡に交じって、「英國人ブラック」の招き看板がある。アダンはこのブラックなる人物を日本語が上手く、日本の古典芸能に精通した英米人の誇りとして紹介している。また、アダンは本書の中で、落語や寄席にある下駄や火鉢などの伝統的な物を示す名詞はイタリックのローマ字で記述して、さらにその解説を加えているところなど、日本文化に対する高い関心を窺うことができる。
 なお、本書が刊行された年に、オスマン・エドワードという人物によって英語版が作られている。」
(京都外国街大学附属図書館『フランス人による日本論の源流をたどって』2008年、68ページより)

(参考)右は本書の英訳版。