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内外出版協会による1905年版がよく知られている、アーネスト・サトウによる英訳版『元治夢物語』の、同版より30年以上前に刊行(試刷)されていた極めて稀少な初版本。
サトウ英訳『元治夢物語』の『Japan Weekly Mail』での連載記事としての掲載(初出)情報
1. Vol. II, No.8: Feb. 25, 1871 (pp.94-97)
2. Vol. II, No.9: March 4, 1871 (pp.106-108)
3. Vol. II, No.10: March 11, 1871 (pp.117-121)
4. Vol. II, No.11: March 18, 1871 (pp.131-133)
5. Vol. II, No.12: March 25, 1871 (pp.145-148)
6. Vol. II, No.13: April 1, 1871 (pp.157-160)
7. Vol. II, No.14: April 8, 1871 (pp.170-171)
8. Vol. II, No.15: April 15, 1871 (pp.186-188)
9. Vol. II, No.16: April 22, 1871 (pp.200-201)
10. Vol. II, No.17: April 29, 1871 (pp.215-218)
11. Vol. II, No.18: May 6, 1871 (pp.232-234)
12. Vol. II, No.19: May 13, 1871 (pp.247-250)
13. Vol. II, No.20: May 20, 1871 (pp.270-273)
14. Vol. II, No.21: May 27, 1871 (pp.285-287)
15. Vol. II, No.22: June 3, 1871 (pp.304-307)
16. Vol. II, No.23: June 10, 1871 (pp.315-318)
17. Vol. II, No.24: June 17, 1871 (pp.334-336)
18. Vol. II, No.25: June 24, 1871 (pp.344-346)
1871年2月25日号(通算第2巻第8号)から、訳者匿名のまま連載記事として掲載が開始され、1871年6月24日号(通算第2巻第25号)に至るまで、18回にわたって掲載されるが、同号で「以下続く(To be Continued)」とあるにも関わらず、次号からは掲載されなくなり、連載が中断してしまう。
しばらく掲載が途絶えたのち、1871年11月4日号(通算第2巻第44号)の628ページに、『元治夢物語』英訳版のJapan Weekly Mail社から単行本(1871年6月15日付)の広告記事(後掲写真参考)が掲載される。同広告によると、連載記事よりも単行本として出版される方が多方面にとって好ましいという判断に至ったことや、訳者としてアーネスト・サトウの名前が明記されている。
これらの情報から、サトウによる英訳版『元治夢物語』は、当初『Japan Weekly Mail』に匿名訳者による連載記事として発表され、原著第5巻の途中まで掲載が進んだ時点で連載が中断してしまうが、その理由は、より多くの読者に向けてまとまった形で公表するために、独立した単行本として出版することが決まったという事情があったことがわかる。
ただし、広告に1871年6月15日付で出版とあるものの、実際にはサトウ自身のために試し刷りが数部行われた程度で、刊行に至らなかったのではないかと推測される。また、この広告では京都地図が付される見込み(will be added)という趣旨も書かれているが、本書にこれに該当するような地図は付されておらず、本文のみがごく少部数印刷されたのみだったのではないか。本書と同じ体裁の書物は(店主の知る限り)これまで1冊のみが確認できる(安土堂書店HP:http://azuchi.cocolog-nifty.com/catalog/2004/09/post.html)が、これもサトウ自身の旧蔵本である。いかなる理由で公刊にいたらなかったのかは現時点では不明であるが、1905年の内外出版協会版をサトウ自身が「再版」とみなしていたという(馬場文英 / 徳田武(校註)『元治夢物語:幕末同時代史』岩波書店、2008年、「解説」326ページ)のは、本書の存在を念頭においてのことだと思われる。