書籍目録

『日本の聖人である、イエズス会士パウロ三木、ヨハネ五島、ディエゴ喜斎の生涯と殉教に関する歴史的事実』

ボエロ / (日本二十六聖人殉教事件)

『日本の聖人である、イエズス会士パウロ三木、ヨハネ五島、ディエゴ喜斎の生涯と殉教に関する歴史的事実』

フランス語版 1862年 ブリュッセル刊

Boéro, Joseph (Giuseppe).

FAITS HISTORIQUES CONCERNANT LA VIE ET LE MARTYRE DES SAINTS JAPONAIS PAUL MIKI JEAN SOAN DE GOTO ET JACWES KISAÏ DE LA COMPAGNIE DE JÉSUS.

Bruxelles, H. Goemare, 1862. <AB2022182>

Donated

Edition in French.

11.5 cm x 18.0 cm, PP.[1(Half Title.)-3(Title.)-9], 10-191, Contemporary green leather.
旧蔵機関の押印、蔵書票の貼り付けあり。 [Sommervogel: Vol.1, 1579(no. 30)]

Information

日本二十六聖人殉教事件を扱った公式著作を手がけたボエロによるパウロ三木ら3人の日本のイエズス会士の伝記作品、大変珍しいフランス語版

 本書は、いわゆる日本二十六聖人殉教事件におけるその犠牲者たち26名が、1862年に列聖されたことを記念して刊行された数多くの著作の中の一つで、こうした著作の代表的、公式的な著者であったボエロ(Giuseppe Boero, 1814 - 1884)が手がけています。全2部構成となっていて、前半の第1部では、パウロ三木ら、同事件において犠牲となったイエズス会関係者3名の生涯を論じる一方で、第2部(47ページ〜)では、この事件が生じることになった時代背景や、殉教事件の推移が論じられています。また、この第2部の末尾では、日本における歴代の主要な殉教者の名簿(162ページ〜)や、パウロ三木らが1627年に列福されるに至った経緯やその関連文書(169ページ〜)なども掲載されています。これらの本文に続く補遺(179ページ〜)では、列聖に関する公式文書や、ボエロの作品が列聖に際して用いられたことなどを示す文書などが収録されています。

 ボエロは本書執筆に際して、ニエレンベルグやアレガンベ、バルトリといった歴代の権威あるイエズス会史、殉教録を手がけた著者の作品を参照にしつつ、その他多くのボランディストらの作品も参照したことを序文で述べています。このように多くの文献を駆使して編纂された本書は、パウロ三木ら3人の日本のイエズス会士の伝記作品として、1862年の列聖に際していわば公式的な作品として執筆されており、当時のローマ教会の意向を十分に踏まえた上で本書が執筆されていることをうかがわせています。また、ボエロは、この事件の背景や推移を解説した第2部の執筆に際しては、特にバルトリ『イエズス会史』を大いに参照したことを述べており、同書の記述がいかに優れたものであるかを強調しています。

 ボエロが手がけたパウロ三木ら3人の日本のイエズス会士を題材とした作品は、1862年に刊行されたイタリア語作品(Istoria della vita e del martirio dei santi giapponesi Paolo Michi, Giovanni Soan de Goto e Giacomo Chisai della Compagnia di Gesù. Roma, 1862. )が最初のものと思われ、その要約版が同年中に刊行されたほか、ドイツ語訳版(1863年)、スペイン語訳版(1862年)、オランダ語訳版(1862年)、英語訳版(1862年)と多くのヨーロッパ言語に翻訳され、広く流布したことがわかっています。

 本書はおそらくこの作品のフランス語訳ではないかと思われるものですが、翻訳者名や、本書が翻訳作品である旨は記されていません。このイタリア語著作のフランス語訳版を明記した作品は、翌年1863年に刊行(Histoire de la vie et du martyre des saints japonais Paul Miki, Jean Soan de Goto et Jacque Kisaï de la compagnie de Jésus. Toulouse, 1863.)されており、本書とほぼ同じ内容であると思われますが、本書はこれに1年先立っているだけでなく、テキストにも相違が見られます。両書の関係は明らかではありませんが、イタリア語版と同じ1862年に刊行されたフランス語版である本書は、国内主要研究機関にも所蔵が見られない大変珍しい作品です。

刊行当時のものと思われる装丁で状態は良好。
見返しには旧蔵機関の蔵書票が貼られている。
本書がベルギーのメヘレン大司教の許可を受けたことを示す文書が掲載されている。
タイトルページ。
序文冒頭箇所。
上掲続き。
第1部は、パウロ三木ら3人の伝記となっている。
パウロ三木伝記冒頭箇所。
パウロ三木は、イエズス会士オルガンティーの下、安土(Anzuciama)で学んでいたが、本能寺の変で信長が死去したことにより安土を追われることになった。
1586年にパウロ三木はイエズス会に入会した。
1588年に天草(Amacusa)へと移り、ドン・ジョアン(Don Jean)こと天草久種が治める同地にあった大学(コレジヨ)で多くの科目を学んだことも記されている。
パウロ三木の信仰心の篤さが大いに讃えられている。
ヨハネ五島伝記冒頭箇所。
ディエゴ喜斎伝記冒頭箇所。
第2部は事件の背景や推移、殉教事件当時の目撃談などが、バルトリ『イエズス会史』に依拠してまとめられている。
ザビエルによる日本宣教の開始に遡って事件に足るまでの日本宣教史が概説されている。
事件全体の経過を辿りつつ、パウロ三木ら3人に主に焦点を当てて論じられている。
日本における歴代の主要な殉教者が為政者ごとに区分されて列挙されている。
上掲続き。
1627年に26人が列福された際の関連資料も掲載されている。
本文に続く補遺では列聖関連文書が収録されている。
ボエロの作品が列聖に際して用いられたことなどを示す文書などに収録されている。
巻末に掲載されている目次①
目次②
目次③