書籍目録

『ジュルナル・デ・サヴァン 1680年号(第8号)』

(モンターヌス『東インド会社遣日使節紀行』)

『ジュルナル・デ・サヴァン 1680年号(第8号)』

1681年 パリ / ブリュッセル刊

JOURNAL DES SÇAVANS DE l’An M. DC. LXXX. TOME HVITIE’ME.

(Jouxte la Copie Imprimée à) Paris / (Se vend A) Bruxelles, Enugene Henry Fricx, 1681. <AB2022134>

Sold

12mo (7.8 cm x 13.1 cm), pp.[1(Title.)-6], 7-262, [LACKING pp.263, 264], pp.265-320, [LACKING pp.321, 322), pp.323, 224(i.e. 324), 325-413, 9 leaves(Table), (some folded) plates: [7], Contemporary vellum.

Information

刊行されたばかりのモンターヌスの『東インド会社遣日使節紀行』のフランス語訳版の紹介と書評記事を掲載

 本書は、フランス最古の文芸総合科学雑誌として名高い『ジュルナル・デ・サヴァン』の1680年号で、この年に刊行された全号、並びに索引と文献目録が1冊に収録されています。1665年に創刊された『ジュルナル・デ・サヴァン』は、時代によって変化しつつも、フランスのみならず各時代のヨーロッパにおける最新の人文・社会・自然科学の各分野における学術記事、新刊書評記事を掲載した一流の文芸総合科学雑誌として高い評価を受けています。本書はこの歴史的な雑誌が刊行されて間もない1680年号(第8号)で、当時刊行されたばかりのモンターヌス(Arnoldus Montanus)の『東インド会社遣日使節紀行』のフランス語訳版の紹介と書評記事が掲載されているという、当時のヨーロッパにおける興味深い日本情報の流通網を示してくれている1冊です。

 本書が刊行された比較的初期の『ジュルナル・デ・サヴァン』は、文庫本のよリモ小さいコンパクトな手のひらサイズの書物でしたが、隔週前後のペースで精力的に刊行されており、1年が終わると翌年早々に当該年に刊行された全号をまとめて1冊の書物として刊行されたようです。誌面で取り上げられているのは、当時の新刊書の紹介と書評記事などで、論説や往復書簡などで、哲学、神学、地理学、自然科学、歴史、文学とあらゆる学問分野が扱われています。1年を通して繙くとその年に話題になった書物や議題を総覧できるようになっており、当時のヨーロッパにおいてどのような書物や議題が取り上げられていたのかを垣間見ることができる興味深い雑誌といえます。

 本書である1680年号(第8号)が日本関係欧文資料として興味深いのは、「当時のヨーロッパにおける日本情報を網羅的に集約した初めての本格的な『日本誌』」(クレインス フレデリック『十七世紀のオランダ人が見た日本』臨川書店、2010年、150ページ)とされる、モンターヌスの『東インド会社遣日使節紀行』のフランス語訳版がいち早く紹介されていることにあります。この作品は、1669年にオランダ語で刊行(Arnoldus Montanus, Gedenkwaerdige gesantschappen der oost-Indische Maatschappy in ’t Verenigde Nederland, aan de Kaisaren van Japan. Amsterdam: Jacob Meurs, 1669)され、同じ出版社からフランス語訳版(Ambassades mémorables de la Compagnie des Indes orientales des Provinces Unies, vers les empereurs du Japon. Amsterdam: Jacob Meurs, 1680)が刊行されました。

 本書では、4月8日号(pp.117-)の「パリでの新刊欄」(Livres nouveaux ou nouvellement receus à Paris)に書名掲載(p.130)して同書への注目を促しています。そして、5月6日号(pp.145-)にて書評と紹介記事が掲載(pp.150-)され、本書の概要や意義が比較的詳しく紹介されています。同書の内容から一部を要約するような形で日本の概要を解説しており、同書が刊行前後から非常に注目されていたことを伺わせます。同書についてはクレインス前掲書をはじめとして多くの研究があり、17世紀後半のヨーロッパにおける日本情報の中心となった作品であることが明らかにされていますが、同書そのものだけでなく、本書に見られるように書評や紹介記事の形でも伝えられるほど同書が注目され、より多くの読者に伝えられていたことは、大変興味深いことと言えるでしょう。