書籍目録

『インド、日本への航海についての素描』

ボエイコフ / ロシア王立地理学協会

『インド、日本への航海についての素描』

著者による直筆献辞つき 1878年 サンクトペテルブルク刊

Voeykov, A(Leksandr). I(Vanovich). / Russian Imperial Geographical Society.

Очерки из путешествия по Индии и Японии. (Essays from a trip through India and Japan)

St. Petersburg, Typograph V. Bezobrazov & Co, 1878. <AB2017135>

Sold

15.2 cm x 23.3 cm, pp. [1(Title)-7], 8-95, Original paper wrappers

Information

ロシアの気候学者が調査のために訪れた明治日本

 本書の著者、ボエイコフ(Aleksandr Ivanovich Voeykov, 1842 - 1916)は、ロシアの気候学者、自然地理学者で、1872年から1877年にかけて世界中の気候調査のための航海を行い、ヨーロッパ、北米、南米、南アジア、東南アジア、そして日本の各地を巡りました。

本書は、そのうちの日本と南アジアでの調査と日本滞在時の記録をまとめたもので、大部分の記述が日本に当てられています。ボエイコフは、日本の東北地方から九州までを広く旅しながら調査を続け、その傍ら日本の気候に関する調査報告と見聞記をまとめて、ロシア王立地理学協会に送っており、それが本書として刊行されたものと思われます。全4部構成をとっており、1876年夏に訪れた日本での出来事と調査を記した第1章から3章(日本への旅路、日本の人口、日本の海上貿易)と、インドの気候調査報告を記した第4章からなっています。学術文献らしく日本アジア協会報(The transaction of the Asiatic Society of Japan)などの先行欧文文献を適宜参照しながらされています。

 ボエイコフは世界周航の途上で本書を刊行しながら、全調査を終えて帰国したのち、1882年はサンクトペテルブルク大学の教授となりました。世界各地の気候調査の結果をまとめて出版したほか、多くの気候学に関する文献を著しており、近代気候学の基礎を築いた人物としても名を残しています。

 気候学分野では非常に著名な人物のため、ボエイコフが1876年に日本を訪れたことはこれまでも知られていましたが、実際に彼が書いた書物を所蔵する国内研究機関は確認できず、特に、日本での調査と滞在記をまとめた本書については、欧米各国の研究機関においてさえほとんど所蔵を見ることができません。明治初期に日本を訪れた外国人の異色の報告書の一つとして、本書は大変ユニークな研究価値がある文献と思われます。
 

表紙部分。刊行当時の紙装丁のまま。
タイトルページ。上部にはボエイコフによる直筆の献辞が記されている。
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本文冒頭