書籍目録

『陶磁器、宝石、その他応用芸術のための図案集』

ベレー / (セーブル陶磁器製作所)/(ジャポニスム)

『陶磁器、宝石、その他応用芸術のための図案集』

(26枚の彩色デザイン画集) [1901年] パリ刊

Belet, E(Émile). / (Nationale de Sèvres).

Modèles & Documents Modernes POUR la Céramique, la Bijouterie & les Arts appliqués.

Paris, Armand Guérinet (Editeur, Librairie d’art Décoratif), [1901]. <AB2020201>

Sold

30.0 cm x 40.0 cm, Title leaf and 26 numbered colored plate leaves(complete), Stored in original quarter cloth card boards portfolio.
保存用のポートフォリオの背の部分に傷みが見られるが、全体として非常に良好な状態。

Information

ジャポニスムに強く影響を受けたセーブル陶磁器製作所のデザイナーによる鮮やかな彩色デザイン画集

 この大変美しい図案集は、フランスのデザイナーで、特に磁器や宝石のデザイン原案を提供したことで知られているベレー(Émile belet, 1840 - 1904)による、26枚からなる陶磁器や宝石、それ以外のさまざまな装飾品のための図案集です。18世紀から続くフランスを代表する陶磁器工房である国立セーブル陶磁器製作所のためにベレーが考案したデザイン画が鮮やかな色彩で再現された作品で、ベレーはこうした図案集の製作においても著名な人物でした。ベレーは陶磁器や宝石といった立体物の図案だけでなく、本書にも収録されているようにポスターの製作なども手がけており、アール・ヌーヴォー調のテキストとイラストを巧みに配したポスターも数多く生み出しています。

 ベレーのデザインは19世紀末から一大ブームを巻き起こしていたジャポニスムの影響も強く感じられるもので、浮世絵に見られるような波模様や、明治初期の日本からの輸出工芸品に数多く見られた海の生き物や蜻蛉や蝉といった生き物たちをモチーフにした作品などに強く影響を受けていたことがうかがえます。本書では、こうしたジャポニスム的なモチーフを巧みに取り入れつつも、ベレー独自の鮮やかな色彩感覚を組み合わされた、日欧のいずれにおいてもそれまで見られなかった大変ユニークなデザインを数多く目にすることができます。

 本書に収録されたデザイン画は、Heriotype print と呼ばれる当時最新の彩色写真印刷を惜しみなく用いて印刷されたものとされていますが、一枚一枚のデザイン画をよく見ると印刷の上に明らかに補筆が施されていることに気がつくことから、より完成度の高い図案集とするために、1展ずつ手彩色による仕上げが加えられているものと思われます。その結果これらのデザイン画は、まるでベレーの肉筆画であるかのような見事な鮮やかさを今なお保っていて、見るものの目を愉しませてくれます。

 ベレーの名はジャポニスム研究の文脈でも現在はほとんど知られることはありませんが、現代の視点から見てもオリジナリティあふれるこれらのデザイン画は、アール・ヌーヴォー全盛期に第一線で活躍していたデザイナーの作品の魅力を余すことなく伝えてくれるだけでなく、さまざまな図案を考案する際に新しい視点からのインスピレーションを与えてくれる作品集と言えるでしょう。