書籍目録

『日本におけるキリスト教の興隆と発展、そして凋落の歴史』

シャルルボア 

『日本におけるキリスト教の興隆と発展、そして凋落の歴史』

初版 全3巻(揃い) 1715年 ルーアン刊

Charlevoix, P(ierre-François-Xavier). de.

HISTOIRE DE L’ÉTABLISSEMENT, DES PROGRÉS ET DE LA DÉCADENCE DU CHRISTIANISME DANS L’EMPIRE DU JAPON.Où l'on voit les différentes Révolutions qui ont agité cette Monarchie pendant plus d’un Siécle.

Rouen, Jacques Joseph Le Boullenger, 1715. <AB2020183>

Donated

First edition. 3 vols.(complete)

12mo(9.5 cm x 16.3 cn), Vol.1: Title.(handwritten), 21 leaves, pp.1-248, LACKING pp.249-252, pp.253-337, 12 leaves(table). / Vol.2: Title., pp.[1-2], 3-128, 229[i.e.129], 230[i.e.130], 131-176, 169[i.e.177], 178-356, 353, 354, 357-392, 293[i.e.393], 394-398, 17 leaves(table), / Vol.3: Title., pp.3[i.e.1],[2-3], 4-210, 121[i.e.211], 212, 113[i.e.213], 214-240, NO LACKING PAGES, pp.251-460, 11 leaves., Contemporary full leather.
第1巻表紙欠落のため手書き表紙。第1巻249-252ページ欠落。第1巻、第2巻の装丁は傷みあり。第3巻のみ別装丁。

Information

19世紀終わりまで広く読み継がれた「日本教会史」のベストセラー

 本書は18世紀に探検家、著述家として活躍したフランスのイエズス会士であるシャルルボア)Pierre-François-Xavier Charlevoix, 1682 - 1761)による「日本教会史」です。著者自身には来日経験はありませんでしたが、既存のイエズス会による日本報告などの史料を読み込んだ上で、ザビエルに始まる日本宣教と約1世紀後の弾圧、廃絶に至るまでの日本におけるキリスト教の歴史を一つの通史としてまとめ上げました。イエズス会士であるシャルルボアの立場から記された「教会史」ではありますが、その執筆に際しては史料による裏付けを基本としており、できる限り客観的な叙述となるように意識されています。「キリシタンの世紀」と呼ばれた時代を後年のヨーロッパの識者がどのように理解、研究し、そして新たな作品として後世に伝えていったのかを知ることができる大変興味深い作品です。

 本書の構成は、」17世紀のイエズス会を代表する著述家であったバルトリによる名著『イエズス会史』を踏襲して、信長や秀吉、家康といったその時代の為政者を一つの区分としています。また、第1巻の冒頭には日本概説とも言える日本のことを紹介する記事が設けられており、この記事は日本について親しくない読者に対して必要な基本情報を提供すると同時に、著者シャルルボアの日本観が反映された「日本論」としても読める大変興味深いものとなっています。全3巻で構成されている本書の構成を簡単にまとめると下記のようになります。

序文
第1章:日本概説、1543年〜1551年(公方様:CUBOSAMA)
第2章(第1巻131ページ〜):1552年〜1563年(公方様)
第3章(第1巻211ページ〜):1563年〜1571年(公方様)
第4章(第1巻264ページ〜):1565年〜1576年(公方様、信長:NOBUNAGNA)

第5章(第2巻1ページ〜):1575年〜1585年(信長)
第6章(第2巻96ページ〜):1582年〜1587年(信長、太閤様:TAYCOSAMA)
第7章(第2巻167ページ〜):1588年〜1593年(太閤様、関白殿:CAMBACUNDONO)
第8章(第2巻248ページ〜):1593年〜1602年(太閤様、関白殿、秀頼:FIDEIORY EMPEREUR、大府様:DAYFUSAMA, Toteut & Regent)

第9章(第3巻1ページ〜):1604年〜1613年(秀頼、内府様)
第10章(第3巻85ページ〜):1613年〜1615年(秀頼、公方様)
第11章(第3巻169ページ〜):1616年〜1624年(将軍様1世:Xogunsama I)、将軍様2世、Xogunsama II)
第12章(第3巻292ページ〜):1624年〜1715年(将軍様2世、東照宮様:To-Xo-gun-Sama)

 このように全3巻を通読することにより、ヨーロッパ人が日本に初めて到着した16世紀半ばから本書刊行当時の現代(1715年)に至るまでの、イエズス会によるキリスト教宣教を中心とした日本現代史を辿ることができるようになっています。なお、本書が刊行されてから10年あまり後に、ヨーロッパにおける日本観を決定づける作品となるケンペルによる『日本誌』が刊行されていますが、シャルルボアはこの作品に大きな影響を受けつつも、それを批判的に吸収することで本書に大幅な増補改訂を施して、本書を刷新するべく新たな『日本教会史』を刊行しています。また、本書は19世紀に入ってからも繰り返し再版されて読み継がれ、主にカトリック圏における日本観の形成に大きな影響を与えた作品としても知られています。
 

「他のイエズス会士の著した『日本史』と同様にキリスト教布教史を中心的なテーマとして扱いながらも、ケンペルの著作に対抗する目的でカトリックの視点から見た日本の文化や社会に関する総括的な記述も掲載している。同書は『教化』目的で版を重ね、フランスのカトリック界を中心にその日本観の形成に多大な影響を与えた。」
(フレデリック・クレインス編(国際日本文化研究センター所蔵日本関係欧文図書目録:1900年以前刊行分』第4巻(1853年以前)臨川書店、2018年、xiii頁)

「ピエール・フランソア・ザビエル・ド・シャルルヴォア(1682-1761)は、フランス東北部のサン・カンタン(St. Quentin)で生まれ、イエズス会の宣教師として、また探検家として活躍する傍ら、キリスト教史に関する多くの著述を残した。彼は16歳でイエズス会に入り、神学や哲学・文学の研究に打ち込んだと言われている。その後、伝道の地を求めて前後2回にわたって新大陸へ赴いた。第一回目は1705年から1709年まで、主にケベックに滞在した。二回目は、1717年からで、セント・ローレンス川に沿って五大湖に達し、さらにミシシッピー川を下ってメキシコ湾に至るなど精力的な探検旅行を行い、この2度に及ぶアメリカ大陸探検の成果として"Histoire et description générale de la Nouvelle-France"(『新フランス植民地史』)を記した。
 また、彼は日本でのキリスト教布教にも関心が高く、我が国の歴史やキリスト教伝道史の研究をおこなっている。」
「本書の標題を直訳すると『日本におけるキリスト教の伝道・発展・衰退』となる日本キリシタンの通史で、著者の日本についての代表作である。本書は1715年パリ北西のセーヌ川河口近くの町ルーアン(Rouen)で出版された初版で、その後、重版や改版がおこなわれ、多くの人々に読まれた。わが国でも『日本キリシタン荒廃史』などと訳され、東西交渉史の研究に用いられた。しかし、根拠となった資料が古いことや、誤りも多いことなどが批判されるようになり、次第に過去の史料となりつつある。
 なお、シャルルヴォアにはもう一つの日本関係史料として1736年に刊行した"Histoire et description générale du Japon"(『日本史』)があり、本書の姉妹編とされている。」
(京都外国大学附属図書館『日仏交流150周年記念稀覯書展示会:フランス人による日本論の源流をたどって』2008年、22ページより)

第1巻
タイトルページが欠落しているが手書きで補われている。刊行年に近い年代に制作されたものと思われる。
序文冒頭箇所。
各章の冒頭にはその章で扱われるトピックの概要が記されている。
第1章:日本概説、1543年〜1551年(公方様:CUBOSAMA)
第2章(第1巻131ページ〜):1552年〜1563年(公方様)
第3章(第1巻211ページ〜):1563年〜1571年(公方様)
第4章(第1巻264ページ〜):1565年〜1576年(公方様、信長:NOBUNAGNA)
天草布教の端緒について記した箇所。
巻末には索引が設けられている。
製本には傷みが見られる。
第2巻
第2巻タイトルページ。
第5章(第2巻1ページ〜):1575年〜1585年(信長)
第6章(第2巻96ページ〜):1582年〜1587年(信長、太閤様:TAYCOSAMA)
第7章(第2巻167ページ〜):1588年〜1593年(太閤様、関白殿:CAMBACUNDONO)
第8章(第2巻248ページ〜):1593年〜1602年(太閤様、関白殿、秀頼:FIDEIORY EMPEREUR、大府様:DAYFUSAMA, Toteut & Regent)
第2巻索引。
第3巻のみ装丁が異なる。
第3巻タイトルページ。
第9章(第3巻1ページ〜):1604年〜1613年(秀頼、大府様)
第10章(第3巻85ページ〜):1613年〜1615年(秀頼、公方様)
第11章(第3巻169ページ〜):1616年〜1624年(将軍様1世:Xogunsama I)、将軍様2世、Xogunsama II)
第12章(第3巻292ページ〜):1624年〜1715年(将軍様2世、東照宮様:To-Xo-gun-Sama)
第3巻索引。