書籍目録

「東京とその近郊のハンディ・ガイド」

喜賓会

「東京とその近郊のハンディ・ガイド」

[1901年?] [東京刊]

The Kihin Kai.(The Welcome Society of Japan)

HANDY GUIDE OF TOKYO AND ITS ENVIRONS. (Divided into 15 Ku or Municipal Districts).

[Tokyo], not dated [1901?]. <AB20211671>

Sold

27.5 cm x 33.5 cm, 1 folded sheet,

Information

喜賓会ガイドマップ第3版の補遺と思われる東京案内

 この地図を発行していた喜賓会(Welcome Society of Japan)とは、1893(明治26)年に、東京商業会議所の初代会頭であった渋沢栄一、三井物産の設立と三井財閥の近代化に大きく貢献した益田孝、貴族院議長であった蜂須賀茂韶らによって設立された非営利組織で、主に来日外国人に対する様々な便宜を図ることをその主たる目的としていました。明治日本における最初の来日観光客を対象とした組織であり、今で言うところの「インバウンド」について初めて対応した日本における、観光組織の原点とも言える存在です。現代の日本交通公社の前身であるジャパン・ツーリスト・ビューロー(1912年設立)が設立されるまで、増加する来日外国人観光客の対応を手探りながら一手に担っていました。

 この小さな折り込みパンフレットは、喜賓会の比較的書記の刊行物と思われるもので、当時15区に分かれていた東京市の簡単な英文ガイドとなっています。刊行年などの書誌情報は一切記載されていませんが、「Welcome Folio」と当時喜賓会が呼んでいた英文ガイドマップに言及しており、その特徴(東京、京都、大阪の市街図と各種の統計情報を掲載しており、会員証を兼ねていること)に合致する地図が1901年に刊行された第3版のガイドマップであることから、この第3版のガイドマップの補遺として製作されたものではないかと思われます。英文での喜賓会の呼称を、「The Welcome Society of Japan」という英語表現よりも、会名をそのままローマ字で記した「THE KIHIN KAI」を優先している点も特徴的です。帝国ホテルをヘッド・オフィスとしながら、神戸のオリエンタルホテルと長崎の日本郵船会社を支部としても記載していることも興味深い点です。このブックレットはごく簡単に東京市内を紹介した小さな印刷物に過ぎませんが、それだけに残存していること自体が非常に珍しく、喜賓会による印刷の幅広さやその変遷を理解する上では大変貴重なものと言えます。