書籍目録

『日本での旅行者のための新ガイドブック』

シェーデル / (シュレーダー)

『日本での旅行者のための新ガイドブック』

1899年? 横浜刊

Shedel J(osef). / (Schroeder, F(ranz).)

NEW GUIDE BOOK FOR TRAVELLERS IN JAPAN. PRESENTED BY The Normal Dispensary (J. SHEDEL)

Yokohama, (Printed at the) "Eastern World" Office, 1899?. <AB2017117>

Sold

10.1 cm x 13.5 cm, Front, pp. [1(Title)-7(Preface), 8], 9-141, 1 leaf (Contents), Original cloth.
表紙右下部分に水やけによると思われる染みあり

Information

横浜居留地で薬局店を経営していたドイツ人シェーデルによる英文日本ガイドブック。横浜で刊行されていた新聞Eastern World編集者シュレーダーの協力と出版

 この珍しい小型のポケット英文日本ガイドブックを書いたのは、横浜で1891年から1899年までの間、Normal Dispensaryという薬局店を開いて成功を収めていたドイツ人シェーデル(Josef Schedel 1856 - 1943)です。彼は横浜居留地返還を機にアメリカを経由してドイツに帰りますが、その前に本書のような英文ガイドブックを刊行していたことは、おそらくこれまでほとんど知られることがなかったものと思われます。

 また、このガイドブックを印刷したのは、当時の横浜で刊行されていた英字新聞Eastern Worldの発行所であることがタイトルページに明記されており、この新聞を発行していたドイツ人シュレーダー(Karle Daniel Franz Schroeder, 1846 - 1923)も本文作成に協力していたことも序文で述べられています。両者の詳しい交流関係は不明ですが、恐らくドイツ人クラブあるいはドイツ東アジア自然民俗学協会(Deutsdhe Gesellshaft für Naturund Völkerkunde Ostasiens,略称OAG)で交流があったものと思われます。

 ガイドブックの内容は横浜を中心とした各地の見所、施設、度量衡、簡単な言葉などを在住者の視点からコンパクトにまとめたものですが、居留地返還に伴う外国人遊歩規定廃止による変化と今後の可能性については特に強調しており、単なる旅行者だけでなく、来日してビジネスを試みる者にとっても有用となるような記述がなされています。また、薬局店を経営していたシェーデルらしく、病院や急病に対応する薬の処方などが掲載されているなど、大変ユニークな内容となっています。

 横浜在住のドイツ人によって独自の視点で書かれた、しかも居留地返還という節目の時期を意識して書かれている大変ユニークな英文ガイドブックです。

冒頭に掲載されているNormal Dispensaryの外観写真。
Normal Dispensaryの広告とタイトルページ。表紙部分から水やけによるシミがある。
序文。
Normal Dispensaryの広告は複数回登場する。テキスト中には多数の広告ページがあり、当時の横浜を中心とした商業状況を伺うことができる。
主要な観光地の紹介
居留地返還に伴う外国人を取り巻く状況と商業環境の変化については特に詳しく、単なる旅行ガイドブックとは異なる趣がある。
病院や医療関係の記事も多い。
出版元である英字新聞Eastern Worldの広告も確認できる。
表紙は刊行当時のものと思われるクロス装丁・水シミがあるが、本文の状態は良好。手帳サイズのコンパクトなガイドブックで携行にも便利であったと思われる。