書籍目録

『東西萬里』

下河内十二蔵

『東西萬里』

第2版 大正15(1926)年 東京(欽英堂)刊

<AB202175>

Sold

12.5 cm x 18.5 cm, Title., 1 leaf, folded Front., pp.1-2, 1 leaf, 4 plates, 1 double pages plate, pp.1-10, 1-277, errata, 1 leaf(colophon), Plates: [37], Original pictorial clothh.
表紙貼り付け写真右下に破れあるが、本文の状態は概ね良好。

Information

天王寺商業学校校長が1923年から24年にかけて行った欧州視察旅行の素朴な記録

 本書は、天王寺商業学校校長であった著者が、欧米の商業学校視察の公務として1923年から24年にかけて行った世界旅行のうち、出発準備から欧州旅行の様子を記したものです。著者にとって初めての海外旅行ということもあって、汽船チケットの手配から携行品の準備など、旅の準備に四苦八苦した経験も含めて、リアリティのある記述となっていることが特徴で、当時の海外旅行の様子が生き生きと伝わってくる作品となっています。日本郵船で欧州に向かう航路における船内の様子や、慣れない洋食のマナー、限られた時間内での浴室利用、デッキで行われる様々な遊戯など、乗客の目線から記された素朴な記述は、旅慣れた専門家による記述にはない独特の魅力があるものです。視察のために訪れた各地の様子を記した記述も、タクシー料金の違いや、ホテル事情、当地の商業学校の様子、現地の日本領事館とのやりとりなど、いずれも興味深いものばかりです。限られた階層の人だけのものではあったと言え、「世界旅行」がより多くの人々に可能となった客船文化華やかりし戦間期に旅をした旅行者の素朴な記録である本書は読み物としても、また当時の旅行文化や、内情を知るための資料としても大変得るものが多い作品ではないかと思われます。