書籍目録

『小波洋行土産』

巌谷小波

『小波洋行土産』

上(再版)・下巻(初版)揃い 明治36(1903)年 東京(博文館)刊

<AB202146>

Sold

15.0 cm x 16.8 cm, Vol.1: Title., Front., 7 Plates, pp.1-4(preface), 1-8(contents), 1-408, 1-10(book review), 5 leaves(colophon & advertisements). / Vol.2: Title., Front., 7 Plates, pp.1-4(preface), 1-7(contents), 1-408, 5 leaves(colophon & preface), Original pictorial cloth.
タイトルページと本文冒頭箇所に旧蔵者による押印あり。[NCID: BN13410918]

Information

日本における児童文学の開拓者である著者のユーモアあふれるヨーロッパ紀行

 本書は児童文学作家、ドイツ文学者として知られる巌谷小波が1900年9月にベルリンへ向かい1902年11月に帰国するまでの間に執筆した見聞記等を上下2巻本にまとめたものです。小波はベルリン大学東洋語学校の招聘を受けてベルリンに赴き同地に滞在している間にドイツのみならずヨーロッパ各地を訪ね、折に触れて日本に寄稿文を送り雑誌に掲載していました。往路はドイツのロイド汽船を、復路は日本郵船を用いていて、船上の風景や出会った人々との交流、自らが主導した戦場での文芸活動の様子なども記されていて、復路で一緒になった渋沢栄一夫妻らとの狂歌等を通じた交流などユニークな記述が満載で読み物としても大変面白い内容となっています。また、ドイツで開催された世界各国の児童文学展覧会の様子を報じた記事など、日本における児童文学社の嚆矢として知られる小波ならではの興味深い記事も見られます。本書の出版社である博文館の中心的人物で本書刊行直前に若くして亡くなった渡辺乙羽(大橋又太郎)と夢の中でベルリンであった話なども収録されています。本造りにもこだわりのあった著者らしく、珍しい正方形の判(それでいて手に馴染みやすい)を採用し、赤と青の箔押しをセンスよくあしらった装丁など、現代の視点でも見ても大変魅力的な書物となっています。

 なお、著者によるアメリカ紀行を収録した作品として、後年に『新洋行土産』(上下2巻)も刊行されています。