書籍目録

『学習用ウォーカー世界地図帳』

ウォーカー

『学習用ウォーカー世界地図帳』

1823年 ロンドン刊

Walker, John.

WALKER'S UNIVERSAL ATLAS, FOR THE USE OF SCHOOLS: Containing 1 World, 2 Europe, 3 Asia, 4 Africa, 5 North America, 6 South America...28 The Holy Land.

London, (PRINTED FOR) C. AND J. RIINGTON; J. CUTHELL; J. NUNN; J. SCATCHERD; LONGMAN, HURST, REES, ORME, AND CO.;,,,J. G. Barnard, Printer, Skinner Street, 1823. <AB2017102>

Sold

15.0 cm x 22. 3 cm, Title, folding double page world map, 27 double page maps, all contemporary colored, Contemporary quarter leather on marbled boards.
背の革部分はオリジナルを活かした後年の補修跡あり。表紙のマーブル紙にはかすれあり。地図は完備、いずれも状態は良好。

Information

1820年代の欧米における世界地理観を示す貴重な学習用教材としてのカラー地図帳

 本書は1823年に学校での学習用教材として刊行された世界地図帳で、冒頭の折り込みの世界地図のほか、27枚の両ページ大の地図が収録されています。いずれの地図も当時の手彩色が施されており大変美しいものです。

 本書を作成したのは、ウォーカー(John Walker, 1759 -1830)で、本書のような地理学分野を中心とした学習用教材の著者として多くの書籍を著したほか、エドワード・ジェンナー(Edward Jenner, 1749 -1823)が開発した当時最先端医療技術であった種痘法の普及に尽力したことでも知られています。

 ウォーカーの学習用地図帳は、1810年代に最初の版が刊行されたようで、以降何度か改訂しながら版を重ねていることから、手頃な学習用教材として一定の需要を得ていたものと推測されます。本書は、1823年に刊行されたものです。冒頭に東西両半球を描く折り込みの大きな世界地図があり、以降はヨーロッパ、アジア、アフリカ、北米、南米と地域ごとの地図が続き、ヨーロッパを中心とした各国地図と日本を含む北・中央アジア地図、そしてメルカトル図法で描かれた世界地図と、パレスチナを中心とした聖地の地図と、全28枚の地図が収録されています。

 日本を描いた地図は、4枚含まれており、冒頭の東西両半球を描いた世界地図、アジア図、北・中央アジア図、メルカトル図法世界図に登場しています。日本の北方や樺太付近は、クルーゼンシュテルン(Adam Johann von Krusenstern, 1770 - 1846)による測量成果を踏まえて描かれており、18世紀までの同地域の地図に比べると、輪郭はかなり正確になっています。樺太はクルーゼンシュテルンによって大陸と地続きの半島であると当時断定されていましたが、本書に登場する日本図では、島として描かれているものと半島して描かれているものとの複数の種類の樺太が登場しています。本書に収録されている日本図の姿は、学習用教材といえども(あるいはそれゆえに)当時の最新の地理的情報を取り入れてこの地図帳が作成されていることを物語っており、大変興味深いものです。

後年の補修跡があるが、基本的には刊行当時の装丁を保っている。
タイトルページ。収録されている地図のリストを兼ねている。
折り込みの東西両半球世界図
ヨーロッパ図
アジア図
アジア図中の日本付近
北・中央アジア図
北・中央アジア図中の日本付近
イタリア図。ヨーロッパの当時の主要国は国別の地図も収録されている。
アメリカ合衆国図。当然まだ西海岸付近は含まれていない。
メルカトル図法による世界図
パレスチナ図
見返しには、当時の生徒が書いたものだろうか。教員を描いたと思われる落書きがある。