書籍目録

[『東洋汽船会社:アメリカ、ハワイ諸島、日本、中国、フィリピン、インドのガイド』]

東洋汽船会社

[『東洋汽船会社:アメリカ、ハワイ諸島、日本、中国、フィリピン、インドのガイド』]

(表紙欠損のためタイトルは推測、出版地、出版社情報は収録地図に依る) [1913年〜15年頃]  [シカゴ刊]

Toyo Kisen Kaisha (Oriental Steamship Company)

[TOYO KISEN KAISHA. AMERICA, HAWAIAN ISLANDS, JAPAN, CHINA, PHILIPPINES, INDIA].

[Chicago], [Poole Bros], [c.1913〜15]. <AB2020377>

Sold

21.3 cm x 22.7 cm (Folded: 10.8 cm x 22.7 cm), pp.1-37, LACKING 38 (Total 9 leaves including both covers), printed in double column, Original pictorial paper wrappers.
表紙片面(記事38ページ相当)が破れて欠落。

Information

 このガイドブックを作成した東洋汽船は、明治から昭和にかけて日本の旅客業界の中心の一角を担っていた海運会社です。現在の商船三井である大阪商船と日本郵船と並ぶ海運会社として大型客船や太平洋航路の運営など積極的な経営方針で知られており、特に海外旅客の誘致には特に熱心で、創業者である浅野総一郎は、紫雲閣と名付けた自身の邸宅に海外からの主要な旅客を招いて宴会を催したりもしています。また、ジャパン・ツーリスト・ビューローの活動にも尽力し「亡くなられる迄殆んど欠かさずビューローの総会に出席され、われわれを大いに激励された」とビューロー25周年回顧録に記されているほどです(山中忠雄『回顧録』ジャパン・ツーリスト・ビューロー、1937年)。

 折りたたむことでポケットに入りやすくなる縦長の形状となるガイドブックは、1枚を左右に分けてテキストを配置しています。最初に当時の東洋汽船が誇る大型三姉妹船である春洋丸、地洋丸、天洋丸の紹介が従来からの日本丸とともになされていて、「Triple-Screw Truibine Steamers」と当時最新のタービン機関を採用した大型客船であることを誇らしげに紹介しています。つづいて、簡単な太平洋航路案内があり、ここには浅野総一郎の肖像写真も見ることができます。

 ガイドブックの内容は、1900年頃に刊行されたものと思われる初期のガイドブックを継承しているものと思われ、構成も非常によく似ています。残念ながら表紙の片面が欠損してしまっているため、正確なタイトルは不明ですが、1916年ごろに刊行されたと思われる同社のガイドブック(弊店HPでも以前<AB2018187>で紹介)と同じ意匠で、内容もよく似ていることから、同じタイトルだったのではないかと推察されます。刊行年について木の記載はありませんが、先に触れた1905年の建造開始当時(運用は1908年から)、同業最大手であった日本郵船をして驚愕せしめたと言われる、天洋丸(Tenyo-Maru)や、1916年3月に座礁、喪失した地洋丸の記載がある一方で、1916年に太平洋航路の運用に際して提携していたパシフィック・メール社から購入したサイベリア丸(Siberia)、 Maru)や、波斯丸(Persia Maru)、これや丸(Korea Maru)などの記載がなく、また本書に収録されている地図には1913年との表記があるため、1913年から1915年の間に刊行されたものではないかと推察されます。

 テキストは、日本の主要都市の案内や、紀行、ガイド(通訳)などが記されていて、1900年ごろのガイドブック刊行当時にはまだ発足していなかったジャパン・ツーリスト・ビューローの案内が新たに加わっています。横浜、東京近郊、日光、鎌倉、富士山、京都、奈良、神戸、瀬戸内、下関、門司、長崎などが数多くの写真とともに紹介されています。続いて、中国、フィリピン、インド、ホノルルの紹介があり、サンフランシスコからアメリカ西海岸を起点してニューヨークまでのアメリカ各地の紹介を見ることができます。巻末は、同社が運行していた航路や料金といった実際的な情報が掲載されていて、簡便なガイドブックとしては非常によくできた内容と思われます。また中程には、航路を記した世界地図と日本地図を掲載しており、大まかな地理情報も得ることができるようになっています。