書籍目録

『東洋汽船による同一船での東方(サンフランシスコ、ホノルル、日本、中国、フィリピン)周遊』

東洋汽船会社 / ウェルズ夫妻

『東洋汽船による同一船での東方(サンフランシスコ、ホノルル、日本、中国、フィリピン)周遊』

[1925年〜26年頃?]  アメリカ(サンフランシスコ?)刊

T(oyo). K(isen). K(aisha). LINE./ Mr. and Mrs., Wells, J. Hadcock.

OUR SAME SHIP CIRCLE CRUISE TO THE ORIENT.

U.S.A.(Sanfrancisco?), [c.1925〜1926?]. <AB2020376>

Sold

Oblong (9.4 cm x 22.8 cm), 12 leaves with covers, Original pictorial paper wrappers.

Information

東洋汽船によるアメリカの新婚夫妻の旅行日記とアルバムから抜粋したというユニークな形式で制作された英文パンフレット

 東洋汽船会社によるこの珍しいパンフレットは、サンフランシスコからマニラまでの各地を寄港しながら、再びサンフランシスコに戻ってくるまで、乗り換えなく同じ船で一周できることを謳ったもので、実際に利用したアメリカの新婚夫妻の旅行日記とアルバムから抜粋したという形式で作成されています。サンフランシスコを出港してから、ホノルル、横浜、神戸、長崎、上海、香港の各地に寄港しながら、マニラへと至り、再び同じルートを逆向きに辿るという約60日のツアーとして組まれています。新婚のウェルズ夫妻の新婚旅行アルバムという体裁で編まれており、サンフランシスコを出発してからの各地での様子や、船内のレクリエーションなどの写真が手書き風のコメントと共に掲載されていて、実際の旅程を辿っている気分を味わえる内容となっています。アルバムの後には日記の抜粋という体裁で日々の記録が掲載されていて、最後には旅費がさりげなく記されていて、おおよその予算がわかるようにもなっています。パンフレットに用いられている写真の多くは、東洋汽船会社が月刊で発行していた雑誌『JAPAN』に掲載されている写真と同じものと思われますので、同誌の編集者を長年務めていたキング・スティール(James King Steele, 1875 - 1937)も、パンフレットの作成に関わっていた可能性が高いのではないかと推察されます。

 裏表紙の見返し部分には、東洋汽船が実際に用いていた荷物タグが印刷されていて、これも旅情を誘う工夫のひとつと言えるでしょう。裏表紙は、神戸のオリエンタルホテル(東洋汽船会社が1917年に買収、以後1924年の売却をへて1926年の営業権売却まで運営)や、東京の帝国ホテルといった寄港先で人気のあった一流ホテルの商標が組み合わされています。パンフレットの印刷会社の記載はなくPrinted in U.S.A.としかありませんが、東洋汽船会社による英文刊行物の多くはサンフランシスコで印刷されていますので、おそらく同地での印刷ではないかと思われます。また、刊行年についての記載もありませんが、東洋汽船運営との明記はないものの神戸のオリエンタルホテルを取り上げていることや、このパンフレットとほぼ同じ内容、意匠で表紙と裏表紙のみを変更した日本郵船によるパンフレットが制作されている(当店HPでも<AB2020166>にて以前にご案内)ことに鑑みますと、両社が合併した1926年からそれほど遡る年代ではなく、おそらく1925年頃から26年頃ではないかと推察されます。